2人のプロデューサーが明かす『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』制作秘話。20年にわたる“親愛なる隣人”との旅路
「スパイダーマン」が誕生してから60周年を迎える2022年。その記念すべきアニバーサリーイヤーの幕開けにふさわしく『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(公開中)が世界中で記録的なメガヒットを飛ばしている。サム・ライミ監督版、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ、MCU版と、これまで製作されたすべての「スパイダーマン」映画を手掛けてきたプロデューサーのエイミー・パスカルは、“親愛なる隣人”がこれほどまでに愛されつづける理由を次のように分析する。
「トム・ホランドはいまでも、親しみやすい少年のままです」(ファイギ)
「スパイダーマンは私たちみんなと同じ。彼は頭がよくて、でもお金がなくて、恋をしています。そして自分が誰であるかがバレると活動ができなくなるという問題を抱え、それでも人々に自分が誰かを知ってもらいたいと思っている。誰かが真実を知るたびに辛いことが起きてしまうという物語は、大人になるための犠牲を描くというクラシックかつ人間的なテーマをもったものだと思います。だからこそ、多くの人々がスパイダーマンに共感するのでしょう」。
一方、ライミ監督版「スパイダーマン」3部作はもちろんのこと、この20年余りに製作されたほぼすべてのマーベル作品に携わってきたマーベルのCCO、ケヴィン・ファイギは「彼は完璧ではないけれど共感ができる、マーベルヒーローの理想的な原型です」とスパイダーマンを形容する。「演じるトム・ホランドは、いま僕とエイミーが言ったすべてのことを完璧に表現してくれていると思います。いまではすっかり大スターになったけれど、トムは並外れた力を持ちつつも、いまでも親しみやすい少年のままです」と、ホランドにあたたかな眼差しを向ける。
それにはパスカルも、「最初に出会った瞬間から、トムはこれまで誰も見たことがないような方法でスパイダーマンを体現しようとしていました。優れた俳優であり、またアスリートでもあり、あらゆる要素を兼ね備えている。そしてなによりも、彼がこの役柄に注ぎ込んだ責任感と情熱は年月を重ねるにつれてどんどん強まっていると感じます。その熱意、ピーターを守りその様々な部分を探求するという意識は、本当に驚くべきものです」と賛辞を送った。
そもそもスパイダーマンをMCUに登場させるための最初のステップになったのは、アイアンマンやキャプテン・アメリカといったほかのマーベルヒーローと対等に渡り歩くことができる、これまでで最年少のピーター・パーカーを見つけること、つまりホランドを掘り当てることにあったのだとファイギは振り返る。「トムはクリス・エヴァンスの目の前で大宙返りを披露し、とても驚かせていた。それにロバート・ダウニー・Jr.と初めて交流した時の化学反応は、まさに若きピーター・パーカーとトニー・スタークのそれと同じでした」。
ファイギはさらに、『ノー・ウェイ・ホーム』の深部へと迫っていく。「『ファー・フロム・ホーム』で描かれた通り、ピーターは完全にアイアンマンの影から抜けだした。本作では、そこからさらにヒーローとして成長する姿が描かれていくんです」と述べる。「何十年も前からのスパイダーマンファンと、トム・ホランドのスパイダーマンから参加したファン、どちらにとっても“正しい”ことを目指し、ベストを尽くしました。その最大の目的は、これまでで最年少のピーターと彼の高校時代を見せることであり、どれほど騒がしい物語のなかにあっても焦点を彼からブレさせないということでした」。