あの怪獣王よりもデカい!話題沸騰の『大怪獣のあとしまつ』、怪獣「希望」を徹底解説
「ゴジラ」も手掛けた怪獣造形のスペシャリストが参加!
壮大な死体処理ミッションにリアリティを持たせるため、バカバカしい内容とは裏腹に、本作にはほかの怪獣映画にも負けない巨費が投じられ、三木監督のこだわりが徹底されている。注目したいのは、なんと言っても大怪獣「希望」のスケールと造形だ。「希望」はあのゴジラをも凌ぐ日本映画史上最大級の全長を誇る超巨大怪獣という設定で、観客を一気にこの未曾有の世界観に引き込む役目も担っている。死体ではあるが、本作のドラマを引っ張る重要なキャストということで、そのビジュアルには細心の注意が払われた。
「ほかの怪獣に似ていてはいけない。背中にきのこ状の突起物がある」などといった三木監督からのオーダーを受け「希望」を作り上げたのは、平成ゴジラシリーズなどを手掛けた日本屈指の怪獣造形のスペシャリスト、若狭新一だ。「実際(=撮影用に制作した)の『希望』は6メートルなんですけど、ここまで大きいものは作ったことがない。これまでは人が中に入る着ぐるみの怪獣がメインでしたから、高くてもせいぜい2メートル50センチぐらいでした」と若狭は撮影時を振り返る。
「それに、いまはコンピューター上で怪獣をデザインするし、デジタルでほとんど作ることを前提にやっている時代です。なので、デジタルでもちろん後処理はしますが、僕たちが手を動かして作った造形が活かされた作品になっていることに非常に感動しました」。
死んだ「希望」の足が天高くそびえ立っているような状態を提案したのは三木監督だ。「茨城県の高さ100メートルぐらいの牛久大仏を高速道路から眺めた時のことを思い出して。死んだ怪獣の足があれぐらいの高さまで上がっていた方がバカバカしくておもしろいなと。大きい方が、あれをどうするんだよ!?ってことになりますからね(笑)」。
また、横たわっているだけという特徴的な「希望」の状態について、若狭は以下のようにコメントしている。「今回は死体になった怪獣が川で横たわっているシーンしかないので、僕たちも最初から立っている姿は作りませんでした。死体の状態でいちばん映えるようにするにはどうすべきかを考えながら、横たわっている姿を模型にし、監督の要望をフィードバックさせながら作っていきました」。
そんな造形物とは別に、ワイヤーに吊られたアラタ役の山田が、傾斜45度の怪獣の表皮を登るシーンなどに挑んだことも本作のリアリティと緊張感を高めている。ガスマスクとゴーグル、ヘルメットを装着した山田は、自分の背丈を超えるかなり重い「穿孔爆弾」の装備も背負い、危険なジャンプシーンにも果敢にチャレンジ。一切妥協しない三木監督のもと、それを10回ほど繰り返した時は正直つらかったようだが、その迫真が映画のドキドキ感を増幅させているのは言うまでもない。
さあ、ここまで読めば、怪獣の死体処理の前知識は十分だろう。あとは映画館のスクリーンで巻き起こる、想像の斜め上を行く大騒動に身を任せてほしい。
文/イソガイマサト