チームワークと痛快さがポイント!イケメンで観る、韓国ケイパー・ムービーの魅力
「応答せよ1997」「元カレは天才詐欺師」などで多くのファンを獲得した俳優ソ・イングクの映画『パイプライン』が公開中だ。水泳に賭ける高校生の恋と青春を爽やかに描いた『君に泳げ!』(13)以来、実に彼の8年ぶりの待望の主演作だ。送油管に穴を開けて石油を盗み、転売する“盗油”を題材にした本作は、韓国でも人気ジャンルの一つであるケイパー・ムービー(犯罪者が様々な得意分野を持つ者たちとチームを組み、財宝や一攫千金をねらう映画)で、スマートなルックスの主人公と最高のチームワークで盗みを働く展開が痛快だ。今回は『パイプライン』と共に、韓国映画の中で描かれてきた“悪くてイケメン”な彼らの活躍にスポットを当て、その魅力を考察してみたい。
『パイプライン』でソ・イングクが扮するのは、送油管への穿孔なら右に出る者はいない技術者ピンドリ。スーツを着こなし颯爽と登場しては、慣れた手つきで仕事を終えていく。そんな彼に目をつけた精油会社の二代目ゴヌ(イ・スヒョク)に雇われ、ワケありだがその道のプロフェッショナル4人と大規模な盗油作戦に挑んでいく。それぞれの思惑と事情が絡む曲者集団は、序盤は衝突を繰り返すのだが、だからこそ次第に分かり合うようになってからの固い結束に胸が熱くなるものがある。
中心になるのは、リーダーを務めるピンドリだ。クールな眼差しの中に少年のような笑顔を持つソ・イングクも、年齢を経てひときわ成長した印象を持つ。大人の余裕がにじみ出る彼が演じるピンドリのリーダーシップで、全員がチームになっていくのだ。懐かしいベンチャーズの名カバー曲「パイプライン」の調子も、映画の軽快なテンポを盛り上げている。
そんなケイパー・ムービー・ブームの火付け役と言ってもよい『10人の泥棒たち』(12)。韓国国内で1200万人以上を動員した大ヒット映画だ。韓国エンタメ界きってのヒットメーカー、チェ・ドンフン監督が手掛けた本作は、韓国、香港、マカオを股に掛ける凄腕の男女総勢10人で結成された窃盗団が、各々の野望を秘めつつ協力し合い、幻のダイヤモンドを盗み出すまでをアクションと共に描いている。
カジノを舞台にしたチームプレイによるスタイリッシュな犯行手口、大規模ロケによるほぼスタント無しのワイヤーアクションなど、娯楽映画のエッセンスがたっぷり詰まっている。豪華キャストが勢揃いしているが、特に韓国チームのリーダーであるポパイを演じたイ・ジョンジェに注目したい。まとめ役として立ち回りながらも、欲望を満たすために裏切りも辞さない二面性はつかみどころがなく、それがなんともセクシーだ。
イ・ジョンジェ本人は優しげなハンサムガイだが、本作の後も同じくチェ・ドンフン監督の『暗殺』(15)で二重スパイを演じていたので、もしかすると裏表の顔を持つキャラクターが気に入ったのかもしれない。多重債務者の中年男を演じたドラマ「イカゲーム」で彼の魅力を知った方は、本作でぜひその演技の多彩さを知ってほしい。