チームワークと痛快さがポイント!イケメンで観る、韓国ケイパー・ムービーの魅力

コラム

チームワークと痛快さがポイント!イケメンで観る、韓国ケイパー・ムービーの魅力

観客が感情移入するために、悪事を働く彼らのより複雑な心情を描くこともある。『コレクターズ ~ソウルに眠る宝刀を盗み出せ~』(20)は、映画もドラマもこなす実力派イ・ジェフンが、口達者で機転の利く天才盗掘者カン・ドングに扮し、古美術キュレーターのユン(シン・ヘソン)の依頼で、ソウル中心部の朝鮮王陵・宣陵に眠る宝刀を盗み出すという大胆不敵なミッションに挑む。インディアナ・ジョーンズ博士といった、名前もキャラクターもとぼけているが腕は確かな盗掘の名人たちは個性が抜群で、今回紹介する中では最もコメディ要素が強い作品だ。

数々の盗掘作戦をリードし、回転の速い頭で次々と目的を果たしていくドングの手並みは圧巻であり、時折見せる男らしい一面やコミカルな表情も見飽きることがない。一方で、ドングには仲間にも明かしていないある狙いがあった。真の望みは宝刀でもなく、もちろん報酬でもない。こうして人間としての心の奥を見せることで、彼らもただ自身の欲望に任せているわけではないのだと感じさせてくれる。ケイパー・ムービーであるだけでなく、ドングの命を賭けたリベンジのドラマとしても心を沸かせてくれる。

「愛の不時着」のヒョンビンは映画『スウィンダラーズ』(17)で復讐に燃える詐欺師を熱演した
「愛の不時着」のヒョンビンは映画『スウィンダラーズ』(17)で復讐に燃える詐欺師を熱演した写真:EVERETT/アフロ

リベンジと言えば、ドラマ「愛の不時着」で旋風を巻き起こしたヒョンビンが、復讐に燃える詐欺師を熱演した『スウィンダラーズ』(17)も記憶に新しい。ヒョンビンが扮するのは、変装を得意とし詐欺師ばかりをターゲットにする詐欺師ジソン。ある時彼の父が謎の自殺を遂げ、影には悪徳詐欺師ドゥチル(ホ・ソンテ)がいることを突き止める。同じくドゥチルを追うヒス検事(ユ・ジテ)の指揮のもと、コ・ソクトン刑事(ペ・ソンウ)や美人詐欺師チュンジャ(ナナ)たちとチームを結成してドゥチルを追い詰めていく。

ジソン(ヒョンビン)はヒス検事(ユ・ジテ)の指揮のもと、父を殺した悪徳詐欺師ドゥチル(ホ・ソンテ)を追い詰めていく
ジソン(ヒョンビン)はヒス検事(ユ・ジテ)の指揮のもと、父を殺した悪徳詐欺師ドゥチル(ホ・ソンテ)を追い詰めていく写真:EVERETT/アフロ

ドゥチルをおびき寄せるため、ジソンが会社社長になりすまして側近を騙すシーンは、容姿端麗を絵に描いたようなヒョンビンならば相手を信用させてしまうだろうとすんなり納得できてしまう。激しく対立するソクトンとジソンの関係に隠された過去など、本作は伏線がよく張り巡らされており、チームプレイの行方に最後まで目が離せない。現実社会では詐欺師=悪の集団というイメージだが、卑劣な人間はもっと他に存在するというメッセージにもうなずけるものがある。観終わった後、ジソンたちの活躍にカタルシスを感じる一本だ。

イム・シワンが大学生の詐欺師ミンジェに扮した『ワンライン/5人の詐欺師たち』(17)
イム・シワンが大学生の詐欺師ミンジェに扮した『ワンライン/5人の詐欺師たち』(17)[c] 2017 NEXT ENTERTAINMENT WORLD, MIIN PICTURES & KWAK PICTURES. All Rights Reserved


同じく詐欺師をテーマにした作品なら、イム・シワンが大学生の詐欺師ミンジェに扮した『ワンライン/5人の詐欺師たち』(17)もおすすめしたい。人懐っこい純朴な見た目で詐欺を働くというギャップと、ドラマ「ミセン〜未生〜」や映画『弁護人』(13)でも高く評価された安定の演技力が際立つ映画だ。経歴を偽り銀行から金銭を騙し取る凄腕のチャン(チン・グ)に才能を見出され仲間に加わる。しかし詐欺師同士の集団は、簡単には一致団結とはならない。観客は二転三転する関係性に、最後まで緊張感を失わずに没頭させられることになる。ただ結束していく姿だけでなく、頭の切れる者たちによるこうした駆け引きも、ケイパー・ムービーの見どころと言っていいだろう。

3年に渡る闘病生活を終え、今年復帰する予定であるキム・ウビンは『技術者たち』(15)で詐欺師のジヒョクを演じた
3年に渡る闘病生活を終え、今年復帰する予定であるキム・ウビンは『技術者たち』(15)で詐欺師のジヒョクを演じた写真:SPLASH/アフロ

3年に渡る闘病生活を終え、今年は復帰作が目白押しなキム・ウビンも、ケイパー・ムービーで華麗な姿を見せたことがある。『技術者たち』(15)の主人公ジヒョク(キム・ウビン)、グイン(コ・チャンソク)、ジョンベ(イ・ヒョヌ)は、あざやかな手口で金庫破りや高価な品を奪い、詐欺も働く悪党3人組。裏社会を牛耳るチョ社長(キム・ヨンチョル)の宝石店に盗みに入ったことで、社長が企む大金強奪計画に加担することになる。

ジヒョクには、この危ない仕事を引き受けた秘められた思いがあり、そうした設定が彼を自己中心的な犯罪者ではなく、より卑劣な悪に立ち向かっていくダーティー・ヒーローにしている。キム・ウビン持ち前のシャープな顔立ちや、金品を盗んで俊敏に去って行く身のこなしや佇まいは、漫画から出てきたかと思うほどヒーロー然としていて、現代的でクレバーな金庫破りのにマッチしている。そんなキム・ウビン3人のアンサンブルに見入っているうち、脚本に仕組まれたケイパー・ムービーならではの罠に気持ちよく騙されてしまう。本物の仁川税関を使ったスケールの大きいアクションもスリル満点だ。

花も実もある俳優たちが躍動する、華麗なケイパー・ムービーの世界。心も塞ぎがちな昨今だからこそ、彼らの姿にスカッとするのもいいかもしれない。

文/荒井南

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