時代と共に進化してきた!『トイ・ストーリー』から『私ときどきレッサーパンダ』へとつながるディズニー&ピクサー音楽の軌跡
ロックバンドとジャズ・ミュージシャンのコラボが彩る『ソウルフル・ワールド』
ディズニー&ピクサーにとってさらなる挑戦となったのが、初めてアフリカ系アメリカ人を主人公にした『ソウルフル・ワールド』(20)だ。そこでディズニー&ピクサー作品に初めて参加したのが、『ソーシャル・ネットワーク』(10)をはじめとするデヴィッド・フィンチャー監督の作品を数多く手掛けてきたトレント・レズナーとアッティカス・ロスのコンビ。レズナーは「ナイン・インチ・ネイルズ」というロックバンドでも活動していて、ジャズ・ミュージシャンを主人公にした本作のサントラに起用されたのは意外だったが、ジャズ/ソウル・ミュージックの新鋭、ジョン・バティステも起用されて2種類のサントラが作られた。レズナーによるシンセサイザーを中心にした幻想的なサウンドと、生楽器の演奏による躍動感あふれるバティステのサウンド。それぞれの音楽を駆使しながら、主人公が行き来する現実世界と“ソウルの世界”を表現していて、ディズニー&ピクサーの音楽に対するこだわりを感じさせた。
気鋭の作曲家とビリー・アイリッシュが参加した『私ときどきレッサーパンダ』の新境地
そんなふうにディズニー&ピクサーは作品ごとに新境地を切り拓いてきたが、『私ときどきレッサーパンダ』でサントラを担当したのは、『ブラックパンサー』(18)や『TENET テネット』(20)など話題作に次々と参加してきたルドウィグ・ゴランソンだ。カナダ・トロントのチャイナタウンを舞台にした本作では、ピクサー作品で初めてアジア系の少女メイをヒロインに設定。ゴランソンは曲にオリエンタルな要素を取り入れつつ、ヒップホップやR&Bのビートを導入した。そして、メイが夢中になっているアイドル・グループ、「4★TOWN」のヴォイス・キャストにティーンに人気のアイドル、ジョーダン・フィッシャーを起用。劇中で使用される4★TOWNの楽曲を、史上最年少でグラミー賞を受賞した人気シンガー、ビリー・アイリッシュと兄のフィニアス・オコネルが手掛けるなど、スコアも劇中歌もいまっぽいサウンドになっているのが特徴だ。
初期のころのディズニー&ピクサー作品は、ランディ・ニューマンの作風に象徴されるような「古きよきアメリカ」を思わせるノスタルジックな音楽が主流だった。しかし、多様性が重視される社会に合わせて、近年は様々なジャンルの音楽を取り入れている。時代と向き合いながら変化し続けるピクサーの姿勢が、『私ときどきレッサーパンダ』の音楽からも伝わってくるはずだ。
文/村尾泰郎
ディズニーがグローバルで展開する定額制公式動画配信サービス。ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、ナショナル ジオグラフィックの名作・話題作に加え、新たに「スター」ブランドが追加され、大人が楽しめるドラマや映画も充実。さらにオリジナル作品も見放題。
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