キューバ出身の最旬女優アナ・デ・アルマスの吸引力と、魅惑の「007」ロケーション
ダニエル・クレイグ最後の勇姿に多くのファンが涙した『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のブルーレイ&DVDの発売を祝して、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』スペシャルサイト「#永久保存版007」が展開中だ。本稿では、ボンドウーマンの一人、パロマ役を演じたアナ・デ・アルマスにフィーチャーしたい。なにしろ、国内外のレビューでも“パロマの出演場面が傑出している”という高評価では一致しているのだ。シリーズ60年の歴史を振り返ってもこんな例はあまり多くない。アルマスが少ない出演シーンのなかであれほど強烈な印象を残せたのは、本人の積極的な役への取り組みと、同時に、人気俳優にありがちな偶然が幸いしたことをご存知だろうか。
ボンドウーマンからモンロー役まで、引く手あまたのアナ・デ・アルマス
アルマスを監督のキャリー・ジョージ・フクナガに推薦したのはダニエル・クレイグだったことはよく知られている。クレイグは『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(20)で共演したアルマスの個性が、本作のボンドウーマン役にマッチしていると感じたからだ。そして、予想は的中する。『ナイブズ~』では陰謀渦巻く富豪一家の中で、唯一イノセントで、オマケに嘘をつくと吐いてしまう看護師のマルタ役に扮したアルマスの天然に近い演技は、そのままパロマ役にも活かされた。
キューバの地でボンドのミッションに協力する新米CIAエージェントのパロマは、激しいアクションの中で思わず、『私3週間しかトレーニングを受けてないの』の口走るのだが、それは本番前にアルマスがクレイグに言った言葉がそのまま採用されたもの。トレーニング不足を自ら告白するボンドガールも珍しいが、アルマスが繰りだすハスキーな台詞回しは、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の現場に入る直前まで撮影していた『Blonde』(22)で演じていたマリリン・モンローが抜け切れていなかったとは、本人の弁である。
こうして、自然体でコケティッシュ、セクシーだがボンドの魅力に決して与しない新世代のボンドウーマンとしてセンセーションを巻き起こしたアルマスは、クランクイン前に危惧していた超大作への抜擢による重圧に押し潰されることもなく、いまやハリウッド最強の売れっ子俳優として引く手数多だ。
『Blonde』のレイティング、NC-17 (17歳以下は鑑賞禁止)が物議を醸すなか、ベン・アフレックと夫婦役を演じるエロティックなサイコスリラー『底知れぬ愛の闇』(22)がHuluで配信されたばかりだし、『ナイブズ・アウト~』つながりのクリス・エヴァンスとはアクション・スリラー『The Gray Man』(22)とアドベンチャー・ロマンス『Ghosted』(22)で連続再共演。
前者では『ブレードランナー 2049』(17)のライアン・ゴズリングも共演者リストに入っていて、なぜだか、アルマスはもう一度仕事してみたいオーラの持ち主みたいだ。そして、その後には「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフ映画『Ballerina』への出演が噂される。そこでは当然、格闘シーンが必須なのだが、さて、今回は3週間の準備で済むかどうかが問題だ。
話をパロマに戻そう。この役を打診された際、アルマスは母国キューバが舞台であることに誇りを感じたと語っている。「この経験をキューバ国民と共有したい」と言って撮影に臨んだ彼女は、勢い余って母国語のスペイン語でエキストラに話しかけたこともあったという。ものすごい没入感というか素顔も天然キャラなのだ。しかしながら、実際の撮影場所はキューバではなく、ロンドンのバインウッド・スタジオ内にハバナの街並みを克明に再現したセット。キューバではよく見かけるミッドセンチュリー時代のアメ車もセットデザイナー・チームのこだわりの逸品だ。
たとえ作り物でも、アルマスから母国語が飛び出すくらい、そこには懐かしいキューバの空気が漂っていたに違いない。そう、「007」シリーズではボンドウーマンを引き立てるロケ地の魅力も重要な要素だ。ジェームズ・ボンドがシリーズ作品を通して、これまで訪れた国は50か国以上と言われている。コロナ禍で、残念ながら気軽に聖地巡りというわけにはいかないが、ここからはボンドウーマン(ガール)に特化して、魅惑のロケーションを再探訪してみよう。