エヴァ、ハルヒ、まどマギ、そして『バブル』へ…ファンを魅了する“セカイ系”アニメの系譜
日本の最強クリエイターが集結したオリジナルアニメ『バブル』(公開中)。テレビアニメ「進撃の巨人」や「甲鉄城のカバネリ」を手掛けた荒木哲郎監督とWIT STUDIOが制作を担い、「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄が脚本、「DEATH NOTE」や「プラチナエンド」の小畑健がキャラクターデザイン原案、前述したWIT STUDIO作品や『プロメア』(19)の澤野弘之が音楽を務める大型作品だ。
本作で描かれるのは、生まれつき特殊な聴覚を持つがゆえに他人とのコミュニケーションをあまり得意としない少年ヒビキ(声:志尊淳)と謎の少女、ウタ(声:りりあ。)が出会ったことにより、世界を揺るがす出来事へと発展していく物語。このストーリー構成はまさに、“セカイ系”と呼ばれるジャンルに通ずるのだ。今回はそんな“セカイ系”にスポットを当て、5つのアニメ作品を紹介していく。
※「セカイ系」という言葉の定義は曖昧で正解はありません
セカイ系の始祖「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズ
2021年に映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にて堂々完結した「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズ。セカイ系ジャンルを一般化させたのが、本作だと言われている。一見すると、「エヴァンゲリオン」は主人公、碇シンジ(声:緒方恵美)が人造人間エヴァンゲリオンに乗り、謎の敵、使徒と戦うロボットアニメだ。しかし、物語の核となるのはシンジの自意識や葛藤だった。これこそが当初のセカイ系の定義だったそうだ。評論家、前島賢の書籍「セカイ系とは何か」には、「『君と僕との関係が具体的な中間項を抜きにして世界の運命と直結云々』というのは後づけの定義であり、元は『エヴァっぽい(=一人語りの激しい)作品』を指すための造語」との記載がある。
「エヴァンゲリオン」で生まれたセカイ系の定義が徐々に形を変え、主人公と主人公を取り巻く人間関係で完結される“狭い世界”の出来事が、国際規模や地球規模、宇宙規模などの“大きな世界”の出来事に発展していくという定義になった。セカイ系に興味のある方は、セカイ系の始祖とも言える「エヴァンゲリオン」シリーズから本ジャンルに触れてみてはいかがだろうか。
“鬱アニメ”としても定評のあるセカイ系「ぼくらの」
夏休みに自然学校に参加した15人の少年少女たちが巨大ロボット、ジアースを操縦し、地球を滅ぼそうとする謎の敵と戦うSFロボットアニメ「ぼくらの」。自然学校に参加した15人というミニマムな日常が一変し、地球規模の出来事に発展していくというストーリーで、数話ごとに一人の子どもにスポットを当てた構成となっている。そして、子どもたち一人一人はなにかしらの事情を抱えており、敵と戦うなかでキャラクターの内面描写が深く掘り下げられていくのだ。
本作はセカイ系アニメという側面だけでなく、“鬱アニメ”とも評されている。そんな子どもたちの抱える事情が“激重”であること、謎の敵の正体が衝撃的であることなどが大きく関係している。陰鬱とした雰囲気や重い作品が好きな方には「ぼくらの」をオススメしたい。
初心者向けの日常セカイ系「涼宮ハルヒの憂鬱」
平凡な高校生活を望む平凡な男子高校生キョン(声:杉田智和)と、入学早々「ただの人間には興味ありません」というトンデモ自己紹介をした涼宮ハルヒ(声:平野綾)を取り巻く、非日常的な日常を描いた学園SFアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」。ヒロインのハルヒは、自身が無意識に望んだことが世界に反映されてしまうという力を持ったキャラクターだ。例えば、「夏休みに心残りを持ってしまったハルヒは、永遠に8月を繰り返してしまう」という、ファンのなかでは言わずと知れた伝説のストーリーがある(「エンドレスエイト」回)。
前述した2作品と違い、大きな敵の出現や世界規模の悲劇性は描かれない。ハルヒは世界そのものを改変してしまうが、それが周囲に悪影響を及ぼすことも特段ない。ユーモアを基調とした学園モノのため、陰鬱としたストーリーよりコミカルなストーリーが好きな方や、セカイ系初心者には見やすい内容となっている。