『劇場版スタァライト』古川知宏監督が語る、『ハケンアニメ!』の見どころ「“表現”が詰まった、スピード感ある作品」
辻村深月の同名小説を原作とする映画『ハケンアニメ!』(5月20日公開)のMOVIE WALKER PRESS試写会が、5月13日に渋谷TOEI2にて開催され、上映終了後にはトークイベントが開催。映画を観たばかりの興奮冷めやらぬ観客を前に、スペシャルゲストとして『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(21)がロングランヒット中のアニメーション映画監督の古川知宏と、アニメ評論家の藤津亮太が登壇。本記事では、古川監督の創作者としての深部にも迫ったトークを、余すことなくロングバージョンでレポートする。
本作は、新人監督VSカリスマ監督の、アニメ業界の頂点“覇権”をかけた、クリエイターの熱い想いを描く物語。吉岡里帆が新人監督の斎藤瞳役を、天才監督の王子千晴役を中村倫也が演じている。さらに柄本佑、尾野真千子ら実力派が共演し、中村の主演作『水曜日が消えた』(20)の吉野耕平が監督を務めている。アニメーション監督、アニメ評論家と、業界に詳しい2人ならではの視点で、本作の見どころをたっぷりと語った。
「ディテールを描かない“選択”。監督と脚本の勇気はすばらしい!」(古川)
藤津「アニメーション監督として、本作にどのような感想を持ちましたか?」
古川「スピード感にこだわった見やすさを感じました。監督、スタッフ、俳優全員が、映画を観るお客様のなかに、キャラクターがどう入っていくのか、意識して作り、走り切った作品という印象です」
藤津「アニメ業界で働く監督から見て、“ここがおもしろい!”と思ったのはどこでしょう」
古川「ディテールの描き方です。アニメ業界の本当の姿、正しさを“あえて”選んでいないということです。例えば、劇場版『SHIROBAKO』以降といったらいいのか…アニメ制作過程を知っている人から観ると、事実とは“違うよね”という部分もあるんです。そこをあえて選んで描いている理由は、どうやってスピード感を出すか、観客にどのように届けるのかに作り手が向かっているから。僕自身も普段やっているからわかるんですが、本当は丁寧に描きたいけれど、そこにこだわることでキャラクターのおもしろさ、スピード感が削がれてしまうこともある。ディテールにこだわることをしない、その“選択”は監督がやらなければいけないことなんです。その選択をした演出や脚本におもしろさを感じました。
アニメを見慣れていない人、例えば、吉岡さんや中村さんといった俳優のファンの方たちも想像できる範疇に(業界の描き方を)はめ込んでいます。調べれば業界の本当の姿はいくらでも出てくるけれど、あえてそのディテールを描かない選択をしたのは、すばらしいと思います」