破格の人間ドラマ『夜を走る』、満席の初日舞台挨拶で佐向大監督「大杉漣さんに見せたかった」
大杉漣主演映画『教誨師』(18)で知られる佐向大監督作『夜を走る』の初日舞台挨拶が5月13日にテアトル新宿で開催され、足立智充、玉置玲央、菜葉菜、高橋努、玉井らん、坂巻有紗、宇野祥平、佐向監督が登壇した。
本作は佐向監督が構想9年をかけたオリジナル脚本の映画化作品。スクラップ工場で働く2人の男が、ある夜の出来事をきっかけに運命を翻弄されていく。足立は「1人の人間、1つの役をやるのに、こんなにたくさんの経験をするのか、と驚いています。滅多にないすごい映画になったと思います」と映画をアピール。
『教誨師』で映画に初出演し、死刑囚役を演じて「毎日映画コンクール新人賞」を受賞した玉置。本作については「今回の役も、人間のいろんな面を浮き彫りにさせる役で、とてもやりがいがありました。人間の複雑さがうまく表現できたらと思って演じました」と本作に懸けた想いを口にした。
舞台やテレビドラマと多方面に活躍するが、映画の出演は佐向監督の2作品のみである玉置は、佐向監督について「手綱をひくとき、先陣を切るとき、チームが居心地よく仕事できるように裏でサポートするときと、いろんな要素を併せ持っていて、尊敬しています」とリスペクトした。
菜葉菜は「『夜を走る』は、いい意味で“男臭さ”が臭いたつ作品で、新鮮に感じました。脚本がすごくおもしろくて、ハラハラドキドキしながら読んだ。一人の女性のなかにある、いろんな面を鋭くえぐり出した、人間の洞察力の鋭さに惚れました」と左向監督を心から称えた。
続いて谷口の怖い上司役を演じた高橋は「足立くんが演じる秋元のストレスになればいいなと思った。本当にあらゆる方法で、ストレスを与える方法を考えた」と言うと、佐向監督は「足立さん、今日も高橋さんが来ることをストレスに感じていましたよ」とジョークを飛ばす。すると高橋も本気でショックを受けている様子を見せ、会場に忍び笑いが広がった。
本作で本格的な映画初主演を務めた玉井は「完成した映画は、いままでに何度も観ているのですが、毎回息をするのを忘れる瞬間がありました」とコメント。同じく映画初出演となった坂巻は「すべてが思い出。佐向監督、(同じシーンを演じた)玉置玲央さんのおかげで演じられました」と感謝した。
宇野は「監督からすごく丁寧で熱いオファーをもらったのが印象に残っています。そして脚本がものすごくおもしろくて、どんな風な映画になるのか想像できなかったです」と語ったあと「できるだけ先入観なく見てください」と観客に呼びかけた。
最後に、佐向監督は「この映画を最初に考えたのはもう10年前。最初は大杉漣さんがおもしろがってくれて、一緒に作ろうと言ってくれた。いまこうして満席の映画館で初日を迎えられたことを、大杉に見せたかった。本当に感謝したい」と締めくくった。
文/山崎伸子