『エクソシスト』『スター・ウォーズ』『ターミネーター2』…レジェンドが生みだした名クリーチャーたち
魅力的なクリーチャーやモンスターをつくり上げ、映画に驚きと感動をもたらしてきたクリエイターたち。そんな創造主たちにスポットを当てたドキュメンタリー『クリーチャー・デザイナーズ ハリウッド特殊効果の魔術師たち』が公開中だ。
映画史に残る名作に登場するクリーチャーやモンスター、ロボットを、特殊メイクやアニマトロニクス、モーションピクチャーといったあらゆる技術を駆使しつくり上げてきた重要人物たちの貴重なインタビューが詰まった本作。有名キャラにまつわる裏話も満載なので、ここではその一部を紹介していく。
『フランケンシュタイン』『エクソシスト』…特殊メイクの神々が生みだした名キャラクター
“怪物をつくりだす”という映画の内容とクリエイターたちの仕事とリンクすることから、まず名前が登場する作品が、1931年版の初代『フランケンシュタイン』だ。この作品でモンスターをつくり上げたのはジャック・ピアース。ボリス・カーロフのきれいな骨格を生かし、目のくぼみと額の広さを強調することで現在まで知られるアイコニックなキャラクター像をつくり上げている。
そんなピアースと並び、特殊メイクの元祖の存在として有名なのが、“千の顔を持つ男”ことロン・チェイニーだ。役者でありながら自ら特殊メイクを施した彼の代表作が1925年の『オペラ座の怪人』。表情のつくり方を熟知していた彼は、一度見たら忘れられないような強烈な怪人を、メイクと表情の融合で見事に浮かび上がらせた。
役者の顔を生かした特殊メイクが施された近年の作品として名前が挙がっているのが「ヘルボーイ」シリーズ。ギレルモ・デル・トロ監督曰く、「もともとロン・パールマンは声だけの出演の予定だった」そうだが、特殊メイク界の巨匠リック・ベイカーの反対によってパールマンに特殊メイクをすることになった、というエピソードも映画では飛びだす。
そんなベイカーとその弟子ロブ・ボッティン、それぞれが同時期に手掛けた2つの狼男映画として有名な『狼男アメリカン』(81)と『ハウリング』(81)の裏側も語られる。もともとジョン・ランディス監督は『狼男アメリカン』についてベイカーと話をしていたが、実現まで10年以上かかってしまったため企画が動きだした時にベイカーに声をかけたところ、なんと彼はジョー・ダンテ監督の『ハウリング』に関わっていたとか。
結局、ベイカーが『狼男アメリカン』へと移ったため、ボッティンが『ハウリング』を手掛けることに。ボッティンの代表作として知られる『遊星からの物体X』(82)では、ジョン・カーペンター監督が企画への参加を熱望するボッティンを一度は門前払いにしたが、『ハウリング』の出来栄えを見て考えを変えたという逸話も。2つの狼男映画の奇跡的なタイミングの合致がなければ、誕生していないクリーチャーもいたのかもしれないと思うとおもしろい。
このほかにもベイカーの師匠であり、特殊メイクの第一人者ディック・スミスにももちろん話は及んでいく。当時は珍しかったコンタクトレンズを使った手法で、恐ろしさと無垢さを同時に表現した『エクソシスト』(73)のリーガンをはじめ、彼の功績も映画では語られている。