60歳を迎え、キャリア最高の輝きを放つトム・クルーズが『トップガン マーヴェリック』で見せる現在進行形
日本はもちろん世界中で大ヒットを記録している『トップガン マーヴェリック』(公開中)。作品自体も熱狂的に受け止められているが、観た人多くの心をつかんでいるのが、マーヴェリック役、トム・クルーズの勇姿である。前作『トップガン』(86)の主演によってハリウッドのトップスターに登りつめてから36年。いまもその地位は揺るがないどころか、ここへ来てキャリア最高の輝きもみせているクルーズ。改めて、彼の映画人としての魅力を振り返ってみたい。
『トップガン』、『トップガン マーヴェリック』でプロデューサーを務めたジェリー・ブラッカイマーが、今回の来日時にトムについてこんなことを語っていた。
「映画に対しても、人生に対しても熱量がものすごい。好奇心の塊で、何より、観客を満足させたいという欲求が異常に高い」。
その言葉どおり、トムが前人未到のチャレンジを続けていることは周知のとおり。『トップガン マーヴェリック』でも自ら戦闘機のF/A-18に乗り込んで撮影に臨んでいるが、これには急激なG(重力加速度)の変化に耐えるトレーニングが必要だ。そこでトムはアメリカ海軍の協力を得て、プログラムを開発。若きパイロット役の俳優と共に5か月間の厳しい訓練を受けた。すでに『トップガン』で戦闘機の搭乗を経験していたトムは、この訓練でも共演者たちに対して教官の役割も果たした。こうした徹底した役作りの原点は、トムが初めて注目された『タップス』(81)で、共演のショーン・ペンらとともに軍隊の世界を身体で知るブートキャンプに送られた体験にたどりつく。リアリティへの追求という点で、初心を忘れない強い意思こそ、スターとしての成長が止まらないポイントだろう。
体を張ったアクションをこなすうえで、必要な“資格”にこだわるのもトム・クルーズの特徴。1994年に飛行機の操縦士資格を取得(その後、購入した自家用機のP-51マスタングは『トップガン マーヴェリック』にも登場)。『バリー・シール/アメリカをはめた男』(17)では、密輸ビジネスに絡むパイロット役ということで飛行シーンをすべて自分でこなした。アメリカからコロンビアまで操縦した撮影もあったという。
そして2018年の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』では、ヘリコプターのスパイラル降下という驚異的スタントに挑むことになり、通常なら1日8時間の訓練で3か月もかかるプロセスを短期間に詰め込んで、ヘリの免許を取得した。車の運転技術もスーパー級のトムは、多くの作品でカーアクションに自ら挑み、鮮やかなハンドルさばきを披露。また正式なライセンスではないが、『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(16)ではスペインの護身術、KEYSI(キーシ・ファイティング・メソッド)のテクニックを取得したりと、役のために“本物の技術”を身体にしみこませることがライフワークとなっている。