女優IUの魅力から“是枝作品らしさ”まで。韓流ファン、塚地武雅が『ベイビー・ブローカー』にグッと来た理由を熱弁!
「『いや、それやりすぎやろ!』を迷いなく見せるのが韓国コンテンツのおもしろさ」
先述したように、カンヌ国際映画祭での快挙など、世界から高い評価を獲得している本作。近年では『パラサイト 半地下の家族』が韓国映画初のアカデミー賞作品賞を受賞し、サバイバルドラマ「イカゲーム」が大ヒットするなど、世界を席巻しているといえる韓国コンテンツだが、その独自の魅力について、塚地は「おもしろいと思うものを、ドストレートにやる豪快な精神」にあるのではないかと分析する。
「K-POPとか音楽もおそらくそうだと思うんですが、ハリウッド映画や洋楽に対する憧れが相当強いと思うんですよ。それで『あれよかったな、やってみよう!』というまっすぐさがある。韓国ドラマを観ていても、『いや、それやりすぎやろ!』とか『むちゃくちゃなつじつまやな』みたいなツッコミどころが多々あるんですけど(笑)、それを『なにが間違ってるの?』っていう迫力とキャストの演技力で、迷いなく見せるのが韓国コンテンツのおもしろさですね。日本でもかつて劇的な急展開がある昼ドラや大映ドラマが人気でしたが、あのドロドロした感じの楽しさに通じる部分があるかもしれない」。
そんな塚地は、俳優としての評価も高く、多数の映画作品にも出演している。今後、是枝監督作品や、韓国作品への出演の意欲について尋ねてみると、「それは必ずみんな『出たい!』ってなるんじゃないですか(笑)」という答えが即座に返ってきた。
「是枝監督の繊細で、生きる強さを感じる作品にも出たいですし。韓国のドラマも映画も大好きなので、機会があるなら、本当に出たいですよね。日本人の役でもいいですけど。僕、俳優ではドラマの『賢い医師生活』や『ミセン-未生-』に出ているキム・デミョンさんの演技が好きなんですよ。恰幅がよろしくて、温かみのあるタイプの役者さんで、作品を見るたびにおもしろいなと思うので、そういった感じの役者さんになりたいですね。あと、監督で注目しているのは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』、『ミセン-未生-』、『シグナル』などのキム・ウォンソク。僕が好きなドラマをいつも演出されていて、自分のツボを捉えるんですよ。そういう人たちの作品にいつか出られたら、最高です!」。
「“あるセリフ”を聞いた瞬間、グワッときちゃいました」
最後に、塚地が『ベイビー・ブローカー』で最も心を揺さぶられたシーンを明かしてくれた。本作では、是枝監督が韓国での取材の過程で出会った、養護施設出身の人たちの「自分は生まれてきてよかったのか?」という問いへのアンサーが描かれている。塚地が挙げたのは、そんな是枝監督の強い想いが込められた、あるシーンだ。
「サンヒョンやドンス、ソヨン、へジンが、寝ている赤ちゃんのそばで語らう場面です。そこで語られる“あるセリフ”を聞いた瞬間、すごく感動して、グワッときちゃいました…。いろんな作品に出てくる、ある種ありきたりなセリフでもあるんですけど、そこに至るまでの流れが、これまでに見たことがなかったような気がして。まっすぐな言葉を口にする時の恥ずかしさを、ちゃんと描きながら伝えているところが心憎い感じがしました」。
“あるセリフ”とは、どんな言葉なのか。その答えを探しに、ぜひ劇場へ足を運んでほしい。
取材・文/石塚圭子