富野由悠季総監督が読者の疑問に次々回答。『Gのレコンギスタ』映画化へのこだわりから制作秘話まで“富野節”炸裂!
(海外の方より)「『G-レコ』IVとVを観たいのですが、海外ではまだ公開されていません。どうすれば最後の『G-レコ』を観ることができるのでしょうか?」(20代・女性)
「いまの時代、Blu-rayになれば観ることはできるから、発売を待ってください…と言うと、Blu-rayにちゃんと英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、中国語、韓国語など各国語の字幕がついているのかが問題ですよね。仕様上問題なくできるんで、そんなに難しい話じゃないんじゃないかな。あとは営業サイドが億劫がらずにやるかどうか、なんですよね。なので、それを待ってください。そして、『G-レコ』は5年後に観ても30年後に観ても古びませんので、死ぬまでに一度観ておいてください(笑)」
「好きな食べ物を教えてください!」(10代・男性)
「富野監督は、食事はしっかり摂るタイプですか?それとも簡単に済ませるタイプですか?これを食べると元気が出るぞ!という食べ物はありますか?」(30代・男性)
「食に対しておおよそ関心がない人間です。好きなものも嫌いなものも特にない。が、僕は朝食を食べないわけにはいかないんです。きちんと三度の食事を摂るよう、かなり意識してるほうじゃないかな。元気でないと仕事ができないから。そこに尽きるので、食事に興味があるわけではないです。焼肉屋さんに行ってもピザ屋さんに行ってもラーメン屋さんに行っても、まるでメニューを覚える気がないので、常に同じものしか頼みません。それに、しょっちゅう妻にも怒られるんですよ。『今夜、なに食べたい?』『うーん、なんでもいい』『それは困る』『いや、だけどなんでもいい!』って…(笑)」
「富野監督の作品は壮大な歴史を題材にした群像劇のようだと思っています。富野監督ご自身にとって思い入れのある歴史小説や映画などはありますか?」(40代・女性)
「特にありません。特にないけれども、僕の年代は映画がスタンダードからシネマスコープになっていく、70mmになっていく、映像の大きな変革期でした。その頃、いわゆる大作映画が作られるようになって、歴史劇も珍しくなかった。いまほど数は多くなかったけど、偏らずにいろんなものをテーマにしていて、それらをなんとなく観ていたので、僕のなかでの基礎学力になっているんだろうなという気はしてます。
ただ、自分がアニメの仕事をやるようになったときに、当然、巨大ロボットものの専門家になろうなんて思ってはいなくて、『日本人がやるからには日本の時代劇からつくれたらいいな』『でもアニメではつくれないんじゃないかな』と思った時期がありました。その鬱憤晴らしが、作品をご質問にあるような方向に向かわせたんじゃないかなとは思います。
なぜ本当の意味での時代劇が日本のアニメでつくれないかというと、鎧兜を作画するのが不可能だったからです。ロボットよりも線が多いんですよ、鎧は。ただ、いまのガンダムは手描きじゃなくCGでやっていて、硬いものだったらかなり描けるようになりました。とはいえ、鎧兜の細かい線をCGでどこまで再現できるかは…わかりません」
「富野監督はどの作品でも戦争の悲惨さや世界の問題点を描いてこられました。けれど、いま世界は愚かな方向へ向かっているように思います。いまこの世界において、大人の行動・意識としてなにが大切だと思われますか?」(40代・男性)
「わかりやすく言えば、環境保全をしましょう、それだけのことです。けれどそれを我々が本当にできるのかと考えると、(机の上のペットボトルを持って)こういうものを使っている限りできない。我々の社会はそういう極端なところまで進んでしまって、先行きが見えてしまっていると僕は思っているので、基本的に期待するものは一切ありません。つまり絶望論しかない。
だから、この歳になってあと10年も20年も生きられず死んでいけるのはすごくありがたい。皆さん、本当に気の毒だと思います。だってもう、ペットボトルがない暮らしを想像できないでしょう?水をプラスチックの容器に入れて売り買いするようになってしまって、それが物流の主流になっているわけですよ。この状況が根本的に異常なんだってことを、ここ20〜30年で言った人がいますか?
とはいえ、僕のようなアニメという絵空事で物事を考えている人間だからこそ発言できることがあるとも思っています。『それは富野さん無責任だよ』って言われるだろうけど、アニメ家だからこそ言っちゃって、これから100年かけて改善するという方向に行きたいんだけど…。100年では改善は無理かもしれないですね」