hideの実弟と映画プロデューサーが明かすhideの素顔…「『TELL ME ~hideと見た景色~』では松本秀人の優しい部分が描かれている」
「いつも完成品とhideさんが好きなお酒を持って、墓前に報告をしていました」(松本)
――今井さんが、松本さんがマネージャーになってから、兄弟として過ごした時間は少なかったのではないかと。
松本「劇中でシャケ弁のシーンが登場しますが、いまならもっと美味しいものを食べさせてあげられたのにと、いまでも悔やむことがたくさんあります。あとは、『TELL ME』の歌詞の意味を尋ねるシーン。詩の世界に触れてはいけないと思いながら、僕がhideさんに聞いた最初で最後の質問でした。hideさんは、帰りの車の中で2人きりになった時、急にお兄ちゃんになるんです。『お前、子ども、どうしてる?元気か?』って。『いつでも、あしながおじさんでいたい』と、僕の子どもにプレゼントをよく贈ってくれていました。兄弟の時間はそのくらいで、ほとんどなかったですね。ずっとマネージャーとして接していたので、hideさんが亡くなった時、泣けなかったんです」
姉帯「劇中で、稲田さんも、『僕も泣けないんだ』というシーンが出てきますよね。hideさんに近いスタッフはみんなそうだったと思います。やらなければならないことが目の前に山積みで」
松本「多すぎたよね」
姉帯「現実感がないし、泣く暇もない」
松本「『これでいいですか?』と聞く相手が、最終ジャッジを下す人間がいない喪失感がありました。なので、いつも完成品とhideさんが好きなお酒を持って、墓前に報告をしていました」
「hideさんの担当をやっていたと胸を張って人に言えることがすごく幸せに感じます」(姉帯)
――hideさんが遺したものを守り抜くという強い意志を持ち続けることができたのはなぜですか?
松本「稲田さんがいてくれて、稲田さんにしかhideの音を触らせないと決めたのもありますけど、やはりファンの方たちですね。hideさんがX時代に紅白に出た時、母親に電話して、『これで、俺のファンは胸を張って歩けるだろ。俺たちのファンだって言えるだろ』って。その言葉を聞いて、こういうことを考えるこの人はすごいなと思いました。hideさんが亡くなった時、ファンのためにも、hideが残した楽曲を1位にするんだ。1位を獲らないと、ファンのみんなが『hideは私の好きな人』だって堂々と言えなくなる。だから、稲田さんをはじめ、皆さんが手を抜かずに、寝ずに頑張ってくださいました」
――映画が公開され、hideさんの宣伝担当だった姉帯さんのいまのお気持ちは?
姉帯「hideさんと出会ったから、いまの自分がある。hideさんの担当をやっていたと胸を張って人に言えることがすごく幸せに感じます。CDセールス100万枚を経験できる人はごくわずかですよ。そういえば、100万枚売れたら、みんなでラスベガスに行こうという話があったよね」
松本「『Ja,Zoo』のあとに、ベストアルバムを出す予定があって、『100万枚売れたら、ラスベガスに連れて行ってやる』ってhideさんに言われてたよね。プロモーションにも積極的で、『俺の空いている時間を作るんじゃねぇ。スケジュールを埋めろ』って」
姉帯「『飯の時間も必要ない』って。hideさんはいつもファーストフードで済ましていました」
――最後に、本作をご覧になった方とこれからご覧になる方に向けてメッセージをお願いいたします。
松本「1998年5月2日から心に蓋をしたhideさんのファンの方たちに、この映画を観て、hideさんの新たな魅力を見つけてほしい、そして、新たな一歩を踏み出していただけたらうれしいです。皆さんに語り継いでほしいですね」
姉帯「人の生き様を描いた作品なので、hideさんや松本さんを知らなくても、いま感動したい、泣ける作品を探している方にもオススメです。作った僕自身も泣きましたから」
松本「hideさんは、松本秀人としての一面を表に一切見せてこなかったけど、本作では、松本秀人の優しい部分が描かれているのがいいですね。ただ優しいというのではなく、男として魅了される、カッコよさが感じられる優しさがありました」
取材・文/編集部