『夏へのトンネル、さよならの出口』制作スタジオCLAPに潜入!プロデューサー&監督が語る、唯一無二な作品への挑戦
鈴鹿央士と飯豊まりえがW主演を務め、八目迷の同名小説をアニメ映画化した『夏へのトンネル、さよならの出口』(公開中)。とある田舎町を舞台に、欲しいものがなんでも手に入る”ウラシマトンネル”の存在を知った高校生の塔野カオルと花城あんずが、トンネル探索を行うなかで関係が深まっていく、ひと夏の青春物語が展開する。本作は、『この世界の片隅に』(16)の制作プロデューサーを務めた松尾亮一郎が設立し、『映画大好きポンポさん』(21)などを手掛けたアニメーションスタジオCLAPが制作を手掛けている。
MOVIE WALKER PRESSでは、本作制作中のスタジオCLAPに潜入。制作現場の様子を、CLAP代表取締役でもある松尾プロデューサーの解説と共にお届けする。また、松尾プロデューサーと本作の監督を務めた田口智久監督にインタビューも同時に敢行し、本作の制作裏話や、設立から6年を迎えたCLAPの”挑戦”について語ってもらった。
クオリティをより高めるため、細かな調整もギリギリまで繰り返す!
取材が行われたタイミングでは、本作の制作は佳境を迎えており、アニメ制作の工程でいう線画に着色を施していく”仕上げ”や、カットの修正を行う”リテイク修正”が行われていた。スタジオ内では、取材中も“カット袋”と呼ばれるカット毎に素材まとめて入れた封筒をスタッフたちが探し続け、制作も大詰めであることが感じられた。
スタジオ内での本作の作業スペースは、「大きく分けて3つある」と松尾プロデューサーは説明する。1つ目は監督のデスクや本作の作画を担当するメインスタッフのスペース。壁にはキャラクターの色見本、”美術ボード”と呼ばれる作品全体やシーンごとのイメージをスタッフ内で共有するサンプルなどがびっしり貼られている。
松尾プロデューサーが指し示す、監督のデスクに「確認用」として置いてあった本棚が映るシーンの美術ボードには、どこかで見たことのある背表紙の本が並んでいるのが確認できる。これは、背表紙というもの自体に著作権が発生しないことが多いため、実在する本の背表紙をそのまま使用できる作品もあるという。このとき確認した“ボード”の段階では、タイトルなどは反映されていないが、「本編ではしっかりと有名な作品が登場するので、本作を観る際には本棚の背表紙のチェックも楽しんでほしい」と松尾プロデューサーは笑顔で語った。
2つ目のスペースは、1つ目のスペースと同じフロアにあり、大量のカット袋が置かれたラックで仕切られている。大きなモニターも置かれており、スタッフで映像を観ながら打ち合わせもできるスペースとなっている。大量に積まれているカット袋には、カット番号が印字されており、このカット袋の内容を順次更新していくことで進行を管理しているとのこと。
制作も佳境であったため、スタッフの多数がリテイク修正を行っていた。このリテイク修正は、「作品やカットによって異なるが、ものによっては10回以上リテイクを重ねるものもある」と松尾プロデューサーは説明する。公開までの残り期間が短いなかで、ギリギリまで作業を行い、作品のクオリティを向上させようとするスタッフの熱気が伝わってきた。
3つ目の作業スペースは、照明が消され真っ暗な空間。ここでは、背景やキャラクターの素材を合成し、光や色味の調整など撮影処理を加えて動画データに変換する”撮影”が行われているとのこと。映画作品だと1000カットを超えて撮影を行うこともあり、「出来上がるアニメをよりクオリティの高いものにするために、細かい調整を繰り返し行っている」と松尾プロデューサーは説明する。作業中のモニターをのぞくと、本作の色彩の美しさをしっかり確認することができ、多くの工程を経てアニメ映画が完成していることを実感した。