「大切なのは“粘り強さ”」『アキラとあきら』原作者の池井戸潤が語る、ピンチへの打開策とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「大切なのは“粘り強さ”」『アキラとあきら』原作者の池井戸潤が語る、ピンチへの打開策とは?

インタビュー

「大切なのは“粘り強さ”」『アキラとあきら』原作者の池井戸潤が語る、ピンチへの打開策とは?

「半沢直樹」「陸王」など誠実に生きる人々を描いて読者を魅了し、数々のベストセラーを生み出してきた日本を代表する作家、池井戸潤。数多く映像化されてきた池井戸作品だが、このたび、対照的な宿命を背負った2人の若者を描いた同名小説が、映画『アキラとあきら』(公開中)となってスクリーンに登場する。生みの親である池井戸は「竹内涼真くんも、横浜流星くんも、ものすごく役にハマっていた。傑作の部類に入る」とダブル主演を果たした役者陣を労いつつ、完成作を絶賛。本作を観て発見したことを語るとともに、「粘ること」をモットーにしているという池井戸が、創作の原動力を明かした。

【写真を見る】公開中の『アキラとあきら』原作者の池井戸潤。竹内涼真、横浜流星への印象は?
【写真を見る】公開中の『アキラとあきら』原作者の池井戸潤。竹内涼真、横浜流星への印象は?[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

「竹内さんと横浜さんがばっちりハマっていて、まるで純米大吟醸のような映画」

つらい幼少時代を過ごし、人を救う銀行員になるという理想を胸に働く山崎瑛(竹内)と、大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、血縁のしがらみに抗い続ける階堂彬(横浜)という、同じ名前を持ちながらも真逆の2人を主人公とした本作。メガバンクに同期入社した彼らが、ライバルとしてしのぎを削りながら、信念と情熱を武器に社会に立ち向かっていく姿を描く。

完成作を観て、池井戸は「ものすごくいい出来だった。本当にいい映画ですよね」とにっこり。自身の作品が映像化される際は「小説と映像はアプローチが違うので、口出ししない」というスタンスを取っているというが、「本作はビジネスストーリーとしても青春ストーリーとしてもものすごくよくできているし、それらが高次元で融合した映画になっていました。銀行監修も行き届いているし、とにかく人間の機微がすばらしく描かれている。原作はとても長いので、映画として2時間ほどの尺に収めるためには取捨選択が必要になりますが、非常にいいところを抽出して、まるで純米大吟醸のような映画でした」と大満足の表情を見せる。

幼くして過酷な運命に翻弄されながらも、銀行員になった山崎瑛(竹内涼真)
幼くして過酷な運命に翻弄されながらも、銀行員になった山崎瑛(竹内涼真)[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

主演2人についても、「ばっちりハマっていた」と演技力を称える。「竹内くんの演じた役柄は、とてもまっすぐな青年。それでいて、苦悩も抱えている。上司の意向とは違うけれど『融資先を救いたい』と悩んだり、涙を流す時もある。そういった感情の落差がある人物なんだけれど、竹内くんはしっかりとそれらを表現していて、演技の振り幅がすばらしいなと思いました。また横浜くんが演じたのは、とてもひねくれた青年で(笑)。お金持ちの家に生まれて、優秀でありながら、自分のやりたいこともできず、兄弟仲も悪い。とても複雑な心境にいるわけです。斜に構えているけれど、それだけではなく胸の内には熱いものをもっているなど、ものすごく難しい役柄だと思うんですが、横浜くんは見事に演じられていましたね」。

大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、銀行員の道に進んだ階堂彬(横浜流星)
大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、銀行員の道に進んだ階堂彬(横浜流星)[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

さらに階堂彬の弟、龍馬を演じた髙橋海人(King & Prince)について「龍馬の錯乱加減をうまく演じていましたね。若気のいたりというか、突っ走ってしまう感じもよく出ていた」と続け、「ユースケ・サンタマリアさんと児嶋一哉さん演じる、彬と龍馬の叔父さんにあたる2人のダメさ加減も、大きな見どころ。役者の皆さん、誰もが役柄にハマっていて、とてもおもしろかった」と役者陣に心からの賛辞を送る。

階堂の叔父たちにはユースケ・サンタマリアと児嶋一哉
階堂の叔父たちにはユースケ・サンタマリアと児嶋一哉[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

「原作に近い形で映像化していただけた」と喜んだ池井戸は、三木孝浩監督と本作の相性のよさを感じたという。「三木監督は、人間の機微を撮るのがとてもうまい。繊細な感情や心の動きをしっかりと捉えてくれるので、そういった監督の持ち味が本作とマッチしていたように感じています。監督と話していると、僕と考えていることが似ているなと思うこともあって。小説と映像のアプローチの違いについての考え方もそうですし、三木監督が『バラバラなところで育ってきた山崎と階堂について、どのように接点を持たせていけばいいのか悩んだ』という話を聞いて、僕が小説を書いていた時にも同じようなことを考えていたのを思い出しました。映画の冒頭に出てくる小物がラストの伏線になっている作りもとても見事で、本当に三木監督に映像化していただけてよかったなと思っています」と感謝しきりだ。

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