伊坂幸太郎を愛する書店員&映画のプロが『ブレット・トレイン』を絶賛! 「見事な伏線回収」「リスペクトを感じた」
キャラクターも、アクションも!ハリウッドならではのスケール感
「舞台、アクション…どれをとっても全体的にビビッド、原作からは想像できない映像的な迫力がある。物語もテンポよく原作を意識せず、映画として楽しめる作品だと思いました。とてもおもしろかったです!」とブックコンパスの西田さんが語るように、ハリウッドならではのスケールを存分に感じられる点も大きなポイントだ。
本作は『ファイト・クラブ』(99)、『トロイ』(04)といった作品でピットのスタントダブルを務めてきた、スタントマン出身のデヴィッド・リーチがメガホンを握っているため、アクションのクオリティの高さはお墨付き。狭い車内を舞台に、近接格闘から日本刀でのチャンバラまで、迫力とケレン味を兼ね備えた多様で本格的なアクションを目の当たりにすることができる。
そんな戦いを繰り広げる殺し屋たちもハリウッドで活躍する豪華な役者たちが演じている。「幸運なのか不幸なのかわからない、緊張感のない凄腕キャラクターという設定がいい。ブラッド・ピッドはさすがの演技、存在感」(ブックコンパス/西田さん)というレディバグを筆頭に、「とても単純な理由になってはしまいますが、やはり真田広之の偉大さを感じました」(紀伊國屋書店/野村さん)と日本の名優、真田を称賛する声も。ほかに 「アンドリュー・小路、初めて知った俳優さんだが、雰囲気が非常によかった」(ブックコンパス/西田さん)というキムラなど、脇を固めるキャラクターまで、それぞれの魅力を存分に発揮している。
なかでも原作でも人気が高いタンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)のコンビは、「タンジェリンは相棒のレモンとのコンビが最高!細男と太っちょという、いかにもなバディものとして、2人を応援して観ていました。髭と英国訛り英語がいかにもなところも好きです」(TSUTAYA/須崎さん)「レモンはもっともこの映画でコミカルな役だと考えます。機関車トーマスへの愛がいい」(紀伊國屋書店/野村さん)と人気のキャラクター。常に軽口を叩き合っている2人が見せる友情には思わず涙してしまうかも?
ここに加えてハリウッドらしさを感じられるのが、ピカピカにネオンが輝く東京といった具合に、オリエンタルなものとして描かれる日本像。終着地が原作の盛岡から京都に変更されており、デカデカと映しだされる富士山や、いつの時代?と言いたくなる古都の街並みなど、珍妙な描写がてんこ盛りだ。しかし、
「非常に似ていて、どこか似てない『日本』が、絶妙に異世界感があって舞台としてよかった…」(ブックコンパス/西田さん)
「思わず突っ込みたくなるハリウッド的な荒唐無稽な要素(客はどこいった?そこで富士山は見えんだろ!とか)と伊坂幸太郎作品の理路整然とした伏線が奇跡の比率で交じり合った快作だと思います」(TSUTAYA/須崎さん)
というコメントでも触れられているように、このやりすぎ感がぶっ飛んだ物語に説得力をもたらし、また緻密な伏線回収との見事なバランスを作り上げている。
原作を読んでいても、読んでいなくても楽しめる!
これまでに述べてきたように伊坂的なおもしろさとハリウッド的なおもしろさが絶妙な塩梅で融合されているため、原作を読んでいようと、読んでなかろうと、誰でも楽しめる『ブレット・トレイン』。
実際、原作を読んでいなかった派、ブックコンパスの西田さんも「やはり、アクション、演出すべてにおいて迫力がある点、それでいて伏線の回収などもしっかり描き切っている。原作ファンも原作を読んでいなくても楽しめる作品に仕上げている点、また、前述したとおり、絶妙につくられた日本が舞台として、とてもおもしろい。さすがハリウッド」と太鼓判を押している。
一方、原作を読んでいたという八重洲ブックセンターの内田さんも、仕上がりに「大変満足」で「キャラクターやラストの展開、銃や剣の多用など、原作からの改編も多いが、ストーリーは細かいところまでほぼ原作通りで、それがしっかりと映画としてのおもしろさにつながっているところ」に好感を覚えている。
また「原作と同じところ、違うところ、脚色されたところ、原作を読んで違いを楽しみたいと思います」(TSUTAYA/須崎さん) 「日本の描写がハリウッドの日本でしたので、原作と比べてどれほど共通点があり、日本人と外国人の日本の見方がどれくらい違うが知りたい」(紀伊國屋書店/野村さん) という言葉にあるように、ハリウッド化という特殊な1作だけに、映画鑑賞後に原作を読んで比較をしてみるという楽しみ方もできる。