ムロツヨシが語る、“出会い”への感謝「飛んでくる石を、笑い飛ばせる大人でありたい」

『かもめ食堂』(06)などの荻上直子監督が、“おいしい食”と“ささやかな幸せ”を綴った映画『川っぺりムコリッタ』(9月16日公開)。特集掲載中のMOVIE WALKER PRESSでは、松山ケンイチら主要キャスト4人にリレーインタビューを実施。第2回は、松山が演じる主人公の隣人役を演じたムロツヨシが、「“荻上前”、“荻上後”で僕の役者人生が変わりました」と語った荻上組の撮影秘話や、食にまつわる思い出などを話してくれた。

「どの役でも食事をするシーンは、なにも考えずに食べるようにしています」

人目を避けて暮らそうと、築50年のハイツムコリッタに引っ越してきた孤独な男、山田たけし(松山)。ムロが演じるのは、いきなり山田に「風呂を貸してほしい」と願い出る図々しい隣人、島田幸三役だ。山田は、島田や墓石の販売員をしている溝口(吉岡秀隆)、夫を亡くしたばかりの大家、南(満島ひかり)といった様々な事情を抱えた住人たちと交流していくなかで、かたくなだった心が解きほぐされていく。

脚本を読む前に出演を決めたというムロ。決め手となったのは、監督が荻上監督だったことで、「荻上さんの演出、脚本の作品に、役者として参加できることがまずうれしかったです」と喜びを口にする。

さらに「劇中で描かれる住人たちの関係性は、まさに現代的な距離感だと思いました。他人とあまり関わりたくないという人でも、どこかでは誰かといないとやっぱり寂しいし、自分一人ではなにもできないと思ったりもします。島田の台詞の『ご飯ってね、一人で食べるより誰かと食べたほうが美味しいのよ』にも共感できました」と、脚本の内容も心に刺さったようだ。

お金がなく、アパートの敷地で家庭菜園をしている島田は、山田の家で風呂を借りるだけではなく、厚かましくも山田が炊いたご飯を「一杯だけ」とリクエスト。そのおいしさにぺろりとたいらげ、山田が止めるのもきかずに、お代わりまでしてしまう。

「脚本に『ご飯をお代わりする』と書いてあるからには、食べ終わってからもう一杯分食べなきゃいけない。しかも長回しなので、そこにはやりがいを感じました(笑)。松山くんも言っていましたが、どの役でも食事をするシーンは難しく捉えず、なにも考えずに食べるようにしています。(前後のシーンの)つながりなどを考えると食べないほうがいいのかもしれないけど、あまり気にすると芝居がおろそかになるし、荻上さんからOKが出ないと思っていたので。僕はそうやっていつも自分との戦いを繰り広げています」。

ご飯を食べるシーンでさほど多くのテイクは重ねなかったそうだが、一番監督から厳しく演出されたのは山田と島田が久しぶりにビールを飲むシーンだそう。「荻上さんから、『(島田たちにとって)ビールはもっと美味しいはずです』と何度も言われました。荻上さん自身もビールがお好きなせいか、そこでの戦いは楽しかったです(笑)。プハーッと飲むんですが、美味しそうに飲もうと頑張りました」。