役者歴17年、小野花梨が明かす女優としての抱負「困った時のピンチヒッターと言われる存在に」
「『鈴木先生』は『自分が生きていく術として、このお仕事をやっていこう』と思った作品」
昨年放送されたNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」では、ヒロインの親友役、きぬ役を好演。それによる周囲の変化について聞くと、「いろんな作品で地方ロケに行って、現地の方と触れ合うと、これまでは『誰だかよくわからないけど、いらっしゃい!』な感じだったんです。でも、きぬちゃんを演じてからは、場所や年齢層に関係なく、『きぬちゃーん!』と呼ばれるようになりました。作品を見てくださる方の反響がケタ違いだということを実感しました」と打ち明ける。そのような反響は、今年公開された『ハケンアニメ!』の時にも感じたようで、「バリバリ働いていらっしゃる方や、実際にモノづくりをしている同じ境遇の方たちから『胸に刺さった!』というお褒めの言葉をいただき、とてもうれしかったです」と感謝の気持ちを忘れない。
2011年に放送され、後に映画化もされたドラマ「鈴木先生」では、性に対して奔放な中学生カーベェこと河辺彩香役を演じていた小野。同級生役だった土屋太鳳や北村匠海、三浦透子らを喰ってしまうほどの存在感は、いまでも忘れられないほどのインパクトだったが、撮影時に小学6年生だった彼女も「これまでのキャリアのうえで、めちゃめちゃ大きい作品」と捉えている。「お芝居とは、どういうものか?を厳しくシビアに教えていただいた現場でしたが、それでも『自分が生きていく術として、このお仕事をやっていこう』と思った作品ですから。あまりにクセが強いキャラだったことで、中学校ではイジメに遭ったりもしましたが、あの作品がなければ、間違いなく、いまここにいないと思いますし、これまでカーベェを演じたことをマイナスに捉えたことは、一度もないですね」と微笑みを浮かべる。
「こういう役をやりたい、こういう立ち位置に行きたいというより、誰かに信頼される役者になりたい」
それから11年、彼女が演じる役柄も大きく変わっていった。「どこかでカーベェの影響もあったと思いますが、10代のころは殺人鬼とか薬物中毒といった加害者的役が多かったんですよ。『私、そういう役しかできないの?』という危機感が少しあったぐらい(笑)。それがここ最近は、逆に事件に巻き込まれてしまうような、被害者的立ち位置な役ができるようになって、ちょっとうれしいんです」と語る彼女。今年放送されたドラマ「ロマンス暴風域」では、『のぼる小寺さん』で共演した工藤遥と共に、主人公が恋に落ちてしまう風俗嬢を演じている。「あくまでも、正統派のヒロインは遥ちゃんが演じたせりか。私が演じたなっちゃんは、とても堕落した生活を送っているし、見る人によってはムカつく感じのキャラでもあるので、あえてせりかと対照的なヒロインにしなきゃという使命感みたいなものを背負いながら演じました」と、常に役と真摯に向き合っていることを感じさせる。
若手実力派として注目される存在でありながら、「私はドーンとブレイクするようなタイプの人間ではないですし、いくらでもいまの私の代わりはいると思っています」と素直に吐露してくれた彼女。今後の展望や目標については、「こういう役をやりたいとか、こういう立ち位置に行きたいというより、誰かに信頼される役者になりたいですね。例えば、『この役を誰にやってもらいたいか?』という話になった時、『小野花梨にお願いしたら、なんとかしてくれるんじゃない?』って言っていただける人間になりたいです。困った時のピンチヒッターと言われる存在に」。
取材・文/くれい響