“韓国トップスター”役のファン・ジョンミン、ニコラス・ケイジのセルフオマージュ…“俳優が本人役”映画のおもしろさ

コラム

“韓国トップスター”役のファン・ジョンミン、ニコラス・ケイジのセルフオマージュ…“俳優が本人役”映画のおもしろさ

JCVDはキャリアの低迷を自虐的コメディに昇華!

ヴァン・ダムが落ちぶれたスターの悲哀を体現した『その男ヴァン・ダム』
ヴァン・ダムが落ちぶれたスターの悲哀を体現した『その男ヴァン・ダム』[c]Peace Arch Entertainment Group/courtesy Everett Collection

俳優が事件に巻き込まれるという点で『人質 韓国トップスター誘拐事件』と共通しているのが、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが自らを演じたコメディ『その男ヴァン・ダム』(08)だ。

一世を風靡した90年代とは異なり、キャリアの落ち目を迎えたヴァン・ダムは、ハリウッド大作ではなくビデオスルー作品にしか出れなくなっていた。そのうえ、娘の親権を巡る裁判でも負けが濃厚という絶望のなか、弁護費用を振り込もうと立ち寄った地元の郵便局で強盗に巻き込まれ、あろうことか犯人に仕立て上げられてしまう。

ヴァン・ダムは強盗に巻き込まれ、犯人だと勘違いされてしまう(『その男ヴァン・ダム』)
ヴァン・ダムは強盗に巻き込まれ、犯人だと勘違いされてしまう(『その男ヴァン・ダム』)[c]Peace Arch Entertainment Group/courtesy Everett Collection

実際にキャリアの低迷期だったヴァン・ダムが、自身のキャリアへの言及を散りばめながら、自虐的に全盛期を過ぎた俳優の悲哀を体現した本作。これまでの自らの人生について語るモノローグなど、自己言及的な視点を盛り込みながら、ヴァン・ダムは哀愁漂う新境地を見せつけている。


また、ライバル的存在のセガールに大作の主役を取られたという話や、裁判で親に相応しくない根拠として過去の映画内での殺害方法を延々と挙げられるなど、ヴァン・ダムならではのギャグが笑いを誘う。犯人一味にヴァン・ダムのファンがおり、代名詞である回し蹴りを見せてほしいとおねだりされるなど、『人質 韓国トップスター誘拐事件』と通じるところも多い1作だ。

「ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン」というドラマでも本人を演じているヴァン・ダム
「ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン」というドラマでも本人を演じているヴァン・ダム[c]Amazon Studios / Courtesy Everett Collection

なおヴァン・ダムは、「ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン」(16)というドラマでもセルフパロディをしている。本作は“実はヴァン・ダムがシークレットエージェントで俳優活動はその隠れ蓑だとしたら…”という、もしもを描いたアクションコメディ。本作でも落ちぶれた元スターとなっているほか、『タイムコップ』(94)を中心とした過去作ネタも存分に盛り込まれたシリーズとなっている。

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