山崎貴監督、“惑星観光映画”と『アバター』を称賛「映画のチケット代で宇宙の果てまで連れて行ってくれた」

インタビュー

山崎貴監督、“惑星観光映画”と『アバター』を称賛「映画のチケット代で宇宙の果てまで連れて行ってくれた」

巨匠、ジェームズ・キャメロンが当時の最新技術を注ぎ込み、“3D映像”という新たな映画の道も切り拓いた『アバター』(09)。今年の12月には13年ぶりの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(12月16日公開)も控えており、否が応にも期待感に胸を膨らませているファンは多いはず。さらに、最新作に先がけて、進化した3D映像で前作を一新させた『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』が、9月23日(金・祝)~10月6日(木)まで2週間限定で上映される。

そこで今回、『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』の公開を記念して、MOVIE WALKER PRESSでは『アバター』のいったいなにがすごかったのか?その功績を再確認するために、日本を代表するクリエイターたちへのインタビューを実施。監督デビュー作『ジェブナイル』(00)に始まり、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや最新作『ゴーストブック おばけずかん』(22)などVFXによる映像表現に精通した山崎貴監督に、『アバター』の魅力やキャメロンが持つクリエイティビティについても語ってもらった。

ジェームズ・キャメロン監督に絶大な信頼を寄せる山崎貴監督
ジェームズ・キャメロン監督に絶大な信頼を寄せる山崎貴監督

「なんでネイティリがこんなにかわいく見えるんだろう?と不思議な感覚になりました」

デビュー作からキャメロン作品を観続け、大ファンを自認する山崎監督。初めて『アバター』を観た時の感想は「とにかく驚いた」だった。「一番はデジタル3Dですね。それまでの3D映画とは全然レベルの違う映像で、とにかく『3Dを世の中に認めさせたい』という決意を感じました」と振り返る。ただし、初めて予告編で青い肌をした先住民ナヴィを見た時は、一瞬ネガティブな感情を抱いたと明かす。「正直、すぐに親近感を持てるキャラクター造形ではなかった。『タイタニック』を大ヒットさせたご褒美に、キャメロンが好きに作らせてもらえる映画なのかな?と思っていたぐらい(笑)。しかし、いざ本編を観てみると、なんでネイティリ(ゾーイ・サルダナ)がこんなにかわいく見えるんだろう?と不思議な感覚になりました」。

観終えた時には、すっかりキャメロンの熱量に圧倒されてしまったようだ。「オリジナルのストーリーとキャラクターで大勝負をするのはとにかく大変なんです。相当に勇気のいる勝負だったと思います。そこに挑んだキャメロンの覚悟に感銘を受けました」。

最初は不気味に見えても、だんだんとカッコよく、かわいく見えてくる感覚があるジェームズ・キャメロンが生みだしたキャラクターたち(『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』)
最初は不気味に見えても、だんだんとカッコよく、かわいく見えてくる感覚があるジェームズ・キャメロンが生みだしたキャラクターたち(『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』)[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「ストーリーの着地点に観客の“感情”をどうやって導くか、そのための技術がすごいんです」

『アバター』の舞台となるのは、地球から遠く離れた神秘の星パンドラ。この星の豊富な天然資源をねらう地球人と、それに抗う先住民ナヴィとの争いが描かれる。山崎監督は脚本も手掛けたキャメロンの構成力を称える。「ストーリーの着地点に観客の“感情”をどうやって導くか、そのための技術がすごいんです。例えば、主人公ジェイク(サム・ワーシントン)とネイティリの関係は吊り橋効果が用いられています。2人の感情が高まったところで、高所から落ちる仕掛けになっていたり…危険なシチュエーションを絡めて盛り上げています。逆に、地球軍の攻撃で(ナヴィが神聖化している)“魂の木”が倒壊されるなど、ボトム(最悪な状況)における映像の見せ方も本当に巧みでした。感情曲線と映像がぴったりシンクロしていて、気持ちいいんです」。


映像表現や演出で観客の感情を盛り上げる力があるので、シンプルなストーリーでも感動させることができるという。「どうしようもない絶望感からの大逆転が本当にうまい監督です。物語が好転していくタイミングがいい!しかも複雑なストーリーで煙に巻くのではなく、映画的技巧を総動員して観客を乗せていく。キャメロンの映画を『たいしたストーリーじゃない』と言う人もいますが、基礎となる腕力が強いので、観客の感情を原初的な快感に連れてってくれるんです。僕も研究させてもらっています」。

ジェイクはナヴィの若い娘、ネイティリとしだいに惹かれ合う(『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』)
ジェイクはナヴィの若い娘、ネイティリとしだいに惹かれ合う(『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』)[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
山崎貴
1964年生まれ、長野県出身。CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。『ジュブナイル』(00)で長編監督デビュー、『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)で日本アカデミー賞ほか各映画賞を受賞。代表作に『永遠の0』(13)、『STAND BY ME ドラえもん』(14)、『海賊とよばれた男』(16)、『アルキメデスの大戦』(19)などがある。最新監督作は『ゴーストブック おばけずかん』(22)。

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