橋本愛が、東京国際映画祭アンバサダーに2年連続就任。ハラスメントや“世代間の溝”など映画界の課題について真摯なスピーチ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
橋本愛が、東京国際映画祭アンバサダーに2年連続就任。ハラスメントや“世代間の溝”など映画界の課題について真摯なスピーチ

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橋本愛が、東京国際映画祭アンバサダーに2年連続就任。ハラスメントや“世代間の溝”など映画界の課題について真摯なスピーチ

10月24日(月)~11月2日(水)に開催される第35回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が9月21日に東京都内で開催され、「コンペティション」部門を始め、全上映作品が発表となった。本年度のフェスティバル・アンバサダーは、昨年引き続き、俳優の橋本愛に決定した。

東京国際映画祭は世界中から優れた映画が集まる、アジア最大級の映画の祭典。今年の「コンペティション」部門には107の国と地域から1695本がエントリー。厳正な審査を経た15本が期間中に上映され、クロージングセレモニーで各賞が決定する。国際審査委員長は舞台演出家・映画監督のジュリー・テイモア、国際審査委員は俳優のシム・ウンギョン、映画監督のジョアン・ペドロ・ロドリゲス、撮影監督の柳島克己、元アンスティチュ・フランセ館長のマリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセルが務める。

東京国際映画祭チェアマンの安藤裕康
東京国際映画祭チェアマンの安藤裕康

昨年から会場を日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区に移転し、今年は使用する劇場をさらに拡大して「一段と飛躍を目指したい」と意気込みを明かした安藤は、「上映会場の拡大により、上映本数も昨年の86本から117本へと増加しました。約3割、上映数が増えます」と切りだし、「今年はオープニングを東京宝塚劇場で実施いたします。これは初めての試みです」と3年ぶりにオープニングのレッドカーペットイベントも復活させて、華やかな幕開けになるという。「未来の映画人の育成についての企画も実施する。国際色豊かな企画にしていきたい」と映画祭の使命を噛み締めつつ、「この2年、コロナ禍の水際対策によって、海外の映画人の来日も限定されていた。今年はいろいろな方に来ていただきたい。にぎやかな映画祭になると思っています」と現時点で100名近くの海外からの映画関係者やマスコミ関係者の来日を予定し、映画人の交流の場としても映画祭を活用してほしいと願っていた。

映画の役割について熱弁した橋本愛
映画の役割について熱弁した橋本愛

昨年に引き続き、映画際の“顔”となるフェスティバル・アンバサダーに抜てきされた橋本は、「本当にありがたいことですし、とても光栄なこと。役目を果たさなければと背筋が伸びる思いです」と気を引き締め、「昨年は“楽しい、ワクワクする”という興奮を発信していたような気がしますが、2年連続で務めさせていただくということで、もうちょっと自分にできることがないかと考えた時に、いまの日本映画界に立ちはだかる課題について、自分の気持ちをお話しできたらと思っています」とさらに思考を深めながら、映画祭と関わっていきたいと話す。

笑顔で質疑応答
笑顔で質疑応答

橋本は「ハラスメントや労働環境の問題など、映画界に限らず、現場を経験していて思うことはたくさんあって」と続け、そのなかでも「世代間の溝」について課題を提起。「これからのものづくりにおいては、上の世代と下の世代、お互いの声を聞き合う姿勢がとても大事なことなんじゃないかと思う。若い世代も、自分の声を押し殺されて諦めてしまいそうなところを、逃げずに、自分の意見をちゃんと持って伝えていく。その表現方法も鍛えて、自分のなかにあるものを伝わるよう、“伝えるスキル”を磨いていくことが大事だと思っている。お互いが歩み寄って、いまよりもっとステキな映画を作る環境になったらいいなと願っています」と心を込める。

世代間の溝についても、持論を展開した
世代間の溝についても、持論を展開した

また昨年アンバサダーを務めたことで、「映画や映画祭の役割についても考えるきっかけになった」という橋本。「個人的な気持ちなんですが」と前置きし、「日本全体としても、同性婚が認められていなかったり、LGBTQ+への理解が浅かったり、世界の環境問題への意識も世界と比べるとまだ薄かったりする。歴史や伝統を守っていく姿勢は美しいし、すばらしい。一方で、それを守り抜く過程で、こぼれ落ちていってしまう人たちもたくさんいる。そういう人たちの苦しみや悲しみにちゃんと寄り添って、“生きていてほしい”という気持ちを込めて、ものを作っていくということが、きっと映画や芸術でもある」と映画の役割について持論を展開。

映画が人々の苦しみや悲しみに寄り添う存在となることで、「いつの間にか世界がちょっとよくなっていくのかなと。映画を通して、世界をよりよくするお手伝いみたいなものができていったらいいのかなと思っています。東京国際映画祭で改めて世界を見渡して、いまの日本のステキなところと、少し改善した方がいいと思われるところを見つめ直すきっかけになれたら」と熱っぽく語っていた。


『窓辺にて』の今泉力哉監督
『窓辺にて』の今泉力哉監督

会見には、コンペティション部門に選出された『窓辺にて』の今泉力哉監督、『山女』の福永壮志監督、『エゴイスト』の松永大司監督。そして東京国際映画祭チェアマンの安藤裕康、プログラミング・ディレクターの市山尚三、シニア・プログラマーの石坂健治、「ジャパニーズ・アニメーション部門」 プログラミング・アドバイザーの藤津亮太も出席した。

『山女』の福永壮志監督
『山女』の福永壮志監督

『愛がなんだ』(19)が本映画祭のコンペティション部門に選出されたことがある今泉監督は、「また選ばれてうれしい」とコメント。「いろいろな国や地域の映画と並んだかたちで観ていただける。審査員の方もいろいろな国の方が観てくださるので、作品にとってもプラスになると思っています」と期待する。『窓辺にて』の企画のスタートは、「稲垣吾郎さんとなにかやってみませんかという話があって、なにを撮ろうかと考えた」と話した。福永監督と松永監督は、コンペティション部門には初参加。福永監督は「光栄です」と喜びを噛み締め、国内外の映画時にと交流することで「次に繋げられるような経験ができたら」と希望。松永監督も「コンペは映画祭の花形。初めて一般の方たちに観てもらう場にもなるので、どういう反応になるのかとても楽しみです」と語っていた。

『エゴイスト』の松永大司監督
『エゴイスト』の松永大司監督

第35回東京国際映画祭は、10月24日(月)~11月2日(水)まで開催。シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、マルキューブ、有楽町micro、東京宝塚劇場、東京国際フォーラムほか、都内の各劇場及び施設、ホールを使用して行われる。

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