樋口真嗣監督が『アバター』に見出した希望…「現実世界に軸足を置くジェームズ・キャメロンがそのリミッターを解除した」

インタビュー

樋口真嗣監督が『アバター』に見出した希望…「現実世界に軸足を置くジェームズ・キャメロンがそのリミッターを解除した」

1984年に『ゴジラ』の造形スタッフとして初めてプロの現場を踏んだ樋口真嗣監督。同年には、特殊効果スタッフを経て手掛けた『ターミネーター』で、ジェームズ・キャメロンが監督として本格デビューを飾った。現在期間限定で上映中の『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』の公開にあたり樋口監督が寄せたコメントにある、「恵まれた環境でなくても、昔ながらの技術とわずかな予算でも、アイデアとセンスがあればこんなにすばらしい映画が作れる、そんな道を指し示してくれた」という言葉には、キャメロンとよく似た境遇のなかで監督への道を歩んだ想いが滲んでいる。「オールドファッションな特殊効果や美術を担当していたキャメロンは、『ターミネーター』や『エイリアン2』で予算や環境を凌駕するアイデアとイメージを着想できれば、映画の価値を高めることができると実証したんです」とも続ける樋口監督。「それは極東の島国で喘ぎ苦しんでいた同志にとって、希望を思い出させてくれる存在でした」。

「ジェームズ・キャメロンが映画の道を示してくれた」と明かした樋口真嗣監督
「ジェームズ・キャメロンが映画の道を示してくれた」と明かした樋口真嗣監督

「『タイタニック』で名実共に映画界の頂点に立ったキャメロンが、それを凌ぐ規模で観たことのない世界に挑んだ」

“アバター”に神経接続をしたジェイクは、ナヴィの娘、ネイティリと親しくなる(『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』)
“アバター”に神経接続をしたジェイクは、ナヴィの娘、ネイティリと親しくなる(『アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター』)[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.


そんなキャメロンが手掛けたSF大作『アバター』(09)は、自身がSF少年だった10代のころから思い描いてきたイメージの集大成。公開から13年経った、いまなお世界興行収入の歴代1位に君臨し続けている。この作品の制作ニュースを聞いた時、樋口監督はキャメロンがこれまでとは違う新たな境地に踏み入ったことに期待したという。「前作『タイタニック』で名実共に映画界の頂点に立ったキャメロンが、それを凌ぐ規模で観たことのない世界に挑んだんですから。それまでは現実世界に軸足を置く慎重さがあったのに、『アバター』ではそのリミッターを解除した。遠い未来の誰も知らない宇宙の果ての物語、つまり画面に登場するすべての要素をデザインしなければならないのです。これは期待しないわけにはいかないでしょう」。

樋口真嗣
1956年生まれ、東京都出身。『ゴジラ』(84)に造形助手として、映画界に入り、特技監督として「平成ガメラシリーズ」などに携わる。おもな監督作は『ローレライ』(05)、『日本沈没』(06)、「進撃の巨人ATTACK ON TITAN」シリーズ(15)、『シン・ゴジラ』(16)、『シン・ウルトラマン』(22)など。

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