松村北斗、大ヒット中の『すずめの戸締まり』で「新海監督に魔法をかけてもらい、自分の声が好きになれた」
「この声が武器になることもあるんだ、と自信につながりました」
自分の声は「性格と合わないと思っています」と苦笑い。「本当はもっとひ弱で、なよなよ喋っていたい性格で (笑)。実際、自分の声が低めでちょっと引っかかりのある声というのは自覚しているのですが、それがいいと感じたことや、武器になると感じたこともなく…。言い方が難しいのですが、これまではこの声のせいで、自分が役として作りたいものの邪魔になると感じたことはありました。なので今回、新海監督から声を褒めていただいたことで、この声が武器になることもあるんだと思えたのは素直にうれしかったです。ただ、この武器(声)をいまどこかで使えと言われても、僕にはムリ。僕はこの音を所持しているだけで、新海監督や音響監督の山田さんたちがいないとうまく演奏することができないというか。そういう意味では、アフレコはテーマパークのようでした。魔法をかけられて、自分の声に自信が持てるようになりました。本音はまだ素の自分の声には自信ないけど、『すずめの戸締まり』での声に関しては自信があります!と言いたいです」と胸を張った。
本作で声優に初挑戦した松村。新しいことへの挑戦には期待と不安、どちらが大きくなるタイプなのだろうか。「期待から入って、最後不安だけになっていくタイプです(笑)。今回もオーディションを受けることにものすごくワクワクしました。オーディションってめったに受ける機会はないけど、実はものすごく好きなんです。ダメだったら世に出ないだけで、何の責任もなく自分が思ったように演じることができる、練習試合みたいなものなんですよね。もちろん緊張もするけど、すごく楽しい時間です。でも実際に合格して役が決まると、その期待がどんどん不安に喰われていきます。どの作品でも毎回こんな感じで、お話をいただいて台本を読んだ時はワクワクするけど、撮影が近づくにつれて不安が大きくなり、気づけば不安しか残っていない…これが僕の定番ルートです(笑)。
ただ、どれだけ挫折しても撮影日はやってくるんですよね。これまで『よし、これで行こう!』と自信を持って挑めたことは一回もなくて、でもその日がきたらもう行くしかない。やるだけのことをやったらあとは時に身を任せる…と、いつもこんな感じです」。初挑戦のなかで様々な試行錯誤を繰り返したという、今回の声優業。松村の凛とした雰囲気がそのまま体現されたような草太が、物語をどのように生きているのか、ぜひ見届けてほしい。
取材・文/タナカシノブ