いよいよ賞レース本格始動!A24『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がゴッサム賞で作品賞&助演賞を受賞

コラム

いよいよ賞レース本格始動!A24『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がゴッサム賞で作品賞&助演賞を受賞

11月末になると、アメリカの東西のインディペンデント系作品の映画賞が動き始める。毎年アカデミー賞直前にロサンゼルスで行われるインディペンデント・スピリット賞のノミネーション発表と、ニューヨークで行われたゴッサム・インディペンデント映画賞の授賞式が行われた。これでいよいよ、アメリカの賞レースが本格的に始まる。

映画賞シーズンが本格到来!ゴッサム・インディペンデント映画賞の授賞式が開催
映画賞シーズンが本格到来!ゴッサム・インディペンデント映画賞の授賞式が開催Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Gotham Film & Media Institute

製作費3000万ドル以下の映画が対象のインディペンデント・スピリット賞のノミネーションでは、ミシェル・ヨー主演の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2023年3月3日公開)が作品賞、監督賞、主演・助演賞、脚本賞など8部門、ケイト・ブランシェットが主演する『Tár』が7部門で続いた。インディペンデント・スピリット賞では、2023年度より俳優部門の性別分けを撤廃し、主演賞と助演賞でそれぞれ10名ずつを候補者に選んでいる。毎年、アカデミー賞でも激戦となる国際映画賞には、各国の映画祭で話題を集めてきた作品がノミネートされた。テレビシリーズ部門のノミネーション発表は現地時間12月13日に行われ、授賞式は2023年3月3日にロサンゼルスのサンタモニカで行われる。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞を受賞
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞を受賞[c]EVERETT/AFLO

11月28日にニューヨークで行われたゴッサム・インディペンデント映画賞の候補基準は、製作費3500万ドル以下。映画とドラマシリーズ合わせて12部門あり、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞と助演パフォーマー賞(キー・ホイ・クァン)を受賞した。脚本賞には『Tár』のトッド・フィールドが、主演パフォーマー賞には『Till』のダニエル・デッドワイラーが選出された。活躍が目覚ましかった作品やタレントに贈られるブレイクスルー賞では、監督賞に『Aftersun』のシャーロット・ウェルズ監督、40分以上の長編ドラマ部門にApple TV+の「Pachinko パチンコ」、40分以下の短編ドラマ部門にNetflix「Mo/モー」がそれぞれ選ばれている。昨年、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(21)が受賞した最優秀国際映画賞は、フランスのオードレイ・ディヴァン監督の『あのこと』(公開中)が選ばれた。

授賞式に出席した「Mo/モー」のレミー・ユソフ、ソルバン・ナイム監督、モー・アマー
授賞式に出席した「Mo/モー」のレミー・ユソフ、ソルバン・ナイム監督、モー・アマーPhoto by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Gotham Film & Media Institute

『Aftersun』は、11歳の少女が父親(ポール・メスカル)との思い出を回想する物語で、アメリカではA24、英国ではMUBIが配給。受賞したブレイクスルー監督賞のほか、作品賞やパフォーマー賞にもノミネートされていた。国際映画賞のノミネート作品には、フランスからはNetflixの『アテナ』(22)やNeonの『Saint Omer(原題)』、アイルランドからはサーチライト・ピクチャーズの『イニシェリン島の精霊』(2023年1月27日公開)、オーストリアほかのIFCフィルムズによる『Corsage』、韓国はMUBIの『別れる決心』(2023年2月17日公開)などが並ぶ。どの作品もアメリカ国外製作で、映画祭などで注目されたのちに有名映画会社やストリーミング会社が劇場配給権を取得していることが特徴。

国際映画賞のノミネートされていたマーティン・マクドナー監督の『イニシェリン島の精霊』
国際映画賞のノミネートされていたマーティン・マクドナー監督の『イニシェリン島の精霊』[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で助演パフォーマー賞を受賞したキー・ホイ・クァンは、受賞スピーチで「去年のいま頃は、これからも仕事があればいいな、としか考えていませんでした。なんてすばらしい名誉なんでしょう!」と挨拶し、妻のエヴリン役のミシェル・ヨーに「エヴリンがいなければ、ウェイモンド(キー・ホイ・クァンの役名)もいませんでした。この旅路を一緒に歩んでくれてどうもありがとう。そしてジェイミー・リー・カーティスにも感謝を。私が最も必要としていた、自信を培う助けをくれました」と述べた。

助演パフォーマー賞受賞の喜びを見せるキー・ホイ・クァン
助演パフォーマー賞受賞の喜びを見せるキー・ホイ・クァンPhoto by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Gotham Film & Media Institute

中国系ベトナム人のキー・ホイ・クァンは、1970年代に両親と共にアメリカに移住。子役として『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)や『グーニーズ』(85)に出演したのちは、映画の表舞台と裏方の両方で仕事をしてきた。北米で今年4月に公開された『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の大ヒットによって、約40年ぶりに再注目されるように。夏に行われたディズニーのコンベンション「D23 Expo」では、インディ・ジョーンズ博士ことハリソン・フォードとの38年ぶりの再会を祝う写真をSNSに上げていた。

【写真を見る】ハリソン・フォードとの再会も!「インディ・ジョーンズ」出演の元子役俳優が、40年ぶりに再注目!
【写真を見る】ハリソン・フォードとの再会も!「インディ・ジョーンズ」出演の元子役俳優が、40年ぶりに再注目!写真はKe Huy Quan(@kehuyquan)公式Instagramのスクリーンショット


受賞スピーチは、「多くの場合、俳優たちはインディペンデント映画でしかチャンスや機会を得ることができません。私もそのような俳優でした。3人の風変わりだけどとても才能のある人々が、この映画の企画を手に、全ての俳優が最も聞きたい3つの単語を発してくれました。We Want You(あなたが必要です)。そして、長い期間において初めて、2度目のチャンスを与えられました。彼らのおかげです。大きな大きな感謝を述べたいと思います。もしもあなたたちがいなかったら、私は今夜ここにはいませんでした」と、涙声でダニエル・クワンダニエル・シャイナートの通称“ザ・ダニエルズ”監督と、プロデューサーのジョナサン・ウォンの3人の名前を呼んだ。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督を務めた“ザ・ダニエルズ”の2人
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督を務めた“ザ・ダニエルズ”の2人Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Gotham Film & Media Institute

昨年のゴッサム賞では、『コーダ あいのうた』(21)のトロイ・コッツァーが受賞し、そのままアカデミー賞まで独走状態が続く結果となった。今年もこの流れにキー・ホイ・クァンが続くのか、期待が高まっている。

関連作品