互いに「理解度が高い」と語る山田裕貴×松本まりかにインタビュー。“愛の輪郭”見せた『夜、鳥たちが啼く』

インタビュー

互いに「理解度が高い」と語る山田裕貴×松本まりかにインタビュー。“愛の輪郭”見せた『夜、鳥たちが啼く』

「『なんだ、これは!?』っていう味わったことのない幸せな時間を感じさせてもらいました(笑)」(山田)

――城定監督の演出はどのように感じましたか?ほかに、撮影中に感じ入ったシーンはありましたか。

山田「最初の恋人と同棲している時、慎一が彼女の働くスーパーの店長への猜疑心を募らせて、殴りに行くシーンがあるんですけど。僕、これまでいろんなアクション映画に出させてきてもらって本当に良かったなって思いました。ワンカットワンシーンの長回しで、一連のアクションにカメラも必死に追いかけてきて、『あ、自分の動きでカメラの視界を被らせそうだな』と思ったら、追いかけている勢いのまんま、表情にカメラがフォーカスできるような動きを自然にとって。

「いろんなアクション映画に出させてきてもらって本当に良かった」と語る山田裕貴
「いろんなアクション映画に出させてきてもらって本当に良かった」と語る山田裕貴撮影/黒羽政士

俯瞰で冷静に考えながら、芝居としてはマジに殴っている顔をしていなきゃいけないという、まさに“冷静と情熱の間”じゃないですけど、かなり計算して演じることができたんです。もちろん、カメラマンさんがうまく動いてくれた部分もあるけど、『長回しで行きますよ』って城定さんが言ってくれてチャレンジできたから。もし、あそこで失敗してテイクを7回も8回も重ねるようなことになったらもう悲惨なことになっていたけど、幸い2回でOKが出たんです。完全な八つ当たりで、 自分にとって邪魔な店長を排除したい。ただ、それだけの気持ちを表現できたと思います」

――裕子の息子役を演じた森優理斗くんは、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では坂口健太郎さん演じる北条泰時の幼少期役で話題になりましたが、今作でも実にナチュラルな演技をしています。現場でのやり取りで覚えていらっしゃることはありますか?

傷ついた慎一と裕子の心の距離を縮めたのは、アキラの存在だった
傷ついた慎一と裕子の心の距離を縮めたのは、アキラの存在だった[c]2022 クロックワークス

山田「普通に会話しているなと感じさせてくれるのがやっぱりすごいなって思いました。いつもは、『マジで、セリフ覚えなきゃ』って思いながら台本を読むんですけど、この作品は、俺、いつセリフを覚えて、あんなふうにしゃべっていたのかなと思う。それは、普通に会話している感覚でいられたからで、それはまりかさんと、優理斗と一緒の時に思いました」

松本まりかが、しなやかに、孤独を抱えるシングルマザーの裕子役を演じた
松本まりかが、しなやかに、孤独を抱えるシングルマザーの裕子役を演じた撮影/黒羽政士

松本「優理斗は本当にすごくて。この作品の中で裕子と慎一をくっつけたのは、やっぱり優理斗演じる息子の存在が大きい。2人には、近づきたいんだけど近づけないという心のガードがあるじゃないですか。また失敗できないですから。でも撮影の中盤だったと思うんですけど、優理斗を間に挟んで3人で歩いている時、突然、私たちの手をくっつけたんです。2人のぎこちない空気感を感じ取って、慎一も裕子も自分からはつなげなかった手を、アキラがつなげてくれた。そこから撮影の2週間、2人の距離感を感じ取っては、何度もくっつけようとするんですよ。子どものパワーで。その健気さに心を打たれて…」


山田「いやあ、『なんだ、これは!?』っていう味わったことのない幸せな時間を感じさせてもらいました(笑)。でも、やっぱり裕子と慎一は距離感が絶妙なんだと思うんです。近すぎて、その前の関係がダメになった2人だから、近すぎない距離がいいんだろうなって。こういう距離感でやっていける関係もあるんだと思う」

松本「求めすぎない関係性というのかな。そういうことをこの映画で感じていただけたらうれしいです」

屈託のない笑顔を見せる、山田裕貴と松本まりか
屈託のない笑顔を見せる、山田裕貴と松本まりか撮影/黒羽政士

取材・文/金原由佳

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