名曲がずらり!『タイタニック』から『アバター』最新作まで、ジェームズ・キャメロン作品を音楽で紐解く
世界中を興奮と感動の渦に巻き込んだ超大作映画『アバター』(09)から13年、待望の続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』がついに公開された。前作の監督にして稀代のヒットメーカー、ジェームズ・キャメロン監督にとっても13年ぶりの監督作となる。「ターミネーター」シリーズや『タイタニック』(97)など、社会現象を巻き起こすくらいの名作を放ってきた彼が、神秘の星パンドラを舞台にした冒険の続編をどう描くのか?映画ファンならずとも、これは気になるところ。
キャメロンの映画に欠かせないのが、映像と共に耳に残る音楽だ。『ターミネーター2』(91)でガンズ・アンド・ローゼズが奏でた「You Could Be Mine」や、『タイタニック』でセリーヌ・ディオンが歌った「My Heart Will Go On」などの主題歌はもちろんだが、劇伴として作られたナンバーも印象的なものが多く、これまでにも才気あふれるコンポーザーがすばらしいスコアを提供してきた。本稿では、そんなキャメロン作品の音楽家について語っていこうと思う。
『ターミネーター』で“機械人間の鼓動”を表現したブラッド・フィーデル
まずは『ターミネーター』(84)と『ターミネーター2』、そして『トゥルーライズ』(94)と、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の作品にスコアを提供したブラッド・フィーデル。1970年代にソングライターとしてポール・サイモンの出版事務所と契約してキャリアを歩み始めた彼は、ダリル・ホール&ジョン・オーツのバックでキーボードを弾くなど、当初はポップ・ミュージック界の裏方として活動していた。80年代に入り、テレビ番組の音楽を1台のシンセサイザーで作っていたが、その手腕がキャメロンの目に留まる。かくして、いまやターミネーターの象徴ともいえる、不穏なビートが反復する印象的なテーマ曲が生まれた。
フィーデルによると、あの反復ビートは機械人間の鼓動を表現したとのこと。本作で成功を手に入れた彼は、以後『フライトナイト』(85)や『告発の行方』(88)などのヒット作で音楽を手掛けたが、90年代半ばにあっさりと映画業界から身を引いてしまった。しかし、キャメロンの手を離れたあとの「ターミネーター」シリーズの新作が作られるたびに、あの“機械人間の鼓動”はアレンジされては甦り、観客に殺人マシンの恐ろしさを体感させている。
『エイリアン2』に『タイタニック』、『アバター』を手掛けたジェームズ・ホーナー
ヒットメーカーとなったキャメロンは売れっ子の映画音楽作曲家と組むことも可能になった。半世紀以上も活躍を続けており、近年は「アベンジャーズ」シリーズでおなじみになったアラン・シルヴェストリとも『アビス』(89)でタッグを組んでいる。しかし、誰よりもキャメロン作品と相性がよかったのはジェームズ・ホーナーだろう。彼はキャメロンと同じく、B級映画の帝王ことロジャー・コーマンの低予算映画でキャリアを重ね、80年代に入ってからは『48時間』(82)などのヒット作にスコアを提供して映画音楽界のメインストリームに躍り出た。
キャメロンとの接点は『エイリアン2』(86)から。ロンドン交響楽団を迎えたスケール感あふれる音楽により、ホーナーは米アカデミー賞作曲賞に初ノミネートされる。そしてキャメロンとの2度目のタッグとなった『タイタニック』では同賞を初受賞するばかりか、主題歌「My Heart Will Go On」の作曲者としてもアカデミーの栄冠を射止めた。3度目のコンビとなった『アバター』も好評を博し、レオナ・ルイスが歌った主題歌「I See You」の作曲を手掛けヒットを飛ばす。当然のように『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でも音楽を手掛ける予定だったが、2016年にヘリコプターの事故によって帰らぬ人となった。