ジョージ・ルーカスの真髄が詰まった『ウィロー』!34年の時を結ぶ、冒険ファンタジーの“原点”に迫る
物語の舞台は映画版から20年後。一人前の魔法使いになったウィローが再び闇の勢力に立ち向かう!
ディズニープラスで配信中のオリジナルシリーズ「ウィロー」は、映画版の“その後”を描いた物語である。時は前作から約20年、ティル・アスリーンを治めるソーシャ(映画版に続いてジョアンヌ・ウォーリーが続投)は、マッドマーディガンとの間にもうけた双子の兄妹エリク(デンプシー・ブリク)とキット(ルビー・クルス)と平和な日々を送っていた。そんなある日、城に現れた闇の勢力によってエリクが連れ去られてしまう。ソーシャはかつての盟友ウィローに助けを求め、物語は再び動きだす。
前作から34年ぶりに制作された続編となる今作は、魔法使いになったウィローが再び邪悪な勢力に挑む物語。キットやマッドマーディガンの従者だった囚人ボーマン(アマール・チャーダ=パテル)、真実を知らされずに普通の人間として育てられたエローラ(エリー・バンバー)たちと、ウィローは命懸けの冒険へと出掛けていくのだ。
もともとルーカスは映画『ウィロー』を壮大な物語のひとコマと考えていたようで、物語も闇が世界を包み込もうとしている時代から始まっていた。ルーカスの原案に基づくノベライズでは過去の時代のエピソードにも触れており、今作にはそれらを意識した描写が見てとれる。
まだ力を発揮できないエローラの苦悩や、加齢によって衰えつつあるウィローの魔法の力、王女としてわがままに育ったキットが真の女王エローラに敵対心を抱くなど、濃厚な人間ドラマが味わえるのはシリーズならではのお楽しみ。カラスにメタモルフォーゼする闇の勢力の使い、マッドマーディガンのように木の根をくわえるボーマン、ドクロの面をかぶった野武士の出現、手裏剣のような武器を使うなどなど、映画版を継承した設定やビジュアルもうれしい限り。残りのエピソードでは、さらなるクリーチャーたちの登場や、死んだとされているが詳細不明のマッドマーディガンの再登場にも期待したいところだ。
今作でのルーカスはキャラクター原案としてのクレジットだが、製作総指揮は、彼からルーカスフィルムを受け継いだキャスリーン・ケネディが担当。「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」を手掛けた名脚本家ローレンス・カスダンの息子ジョナサン・カスダンが製作総指揮や脚本を務めているほか、ロン・ハワード自身も製作総指揮に名を連ねている。サウンドトラックはジェームズ・ニュートン・ハワード(「ER緊急救命室」、「ファンタスティック・ビースト」シリーズ)らの新曲だが、『タイタニック』(97)、『アバター』(09)などの故ジェームズ・ホーナーによるオリジナルのテーマ曲がアレンジして使われているのもファンには胸アツなプレゼントだ。
2018年よりスタートした『ベスト・キッド』(84)のスピンオフドラマ「コブラ会」が話題を呼び、『トップガン マーヴェリック』(22)が世界的に大ヒットするなど、1980年代の名作たちの後日譚がムーブメントとなっている昨今。ファンタジー作品としての厚みのある設定と、ルーカス作品らしい壮大なバックグラウンドを持つ映画『ウィロー』は、新たに語られるべきエピソードを無数に生みだすポテンシャルがあり、オリジナルシリーズ「ウィロー」は、旧作の良さを受け継ぎながらも新たなファンを開拓できる、稀に見る好バランスを保っている。本作は、この続編ブームの決定打として新旧のファンを満足させられる、唯一無二の作品と言えるだろう。
文/神武団四郎