異色のヒット作『LAMB／ラム』の監督が、最大のタブー“アダちゃんの秘密”をついに明かす！
羊から生まれた赤ん坊を、羊飼いの夫婦が我が子のように育てあげる。その赤ん坊の顔は羊そのものだが、肉体は…。アイスランドを舞台に、想像を超えた怪しい世界が展開していく『LAMB／ラム』(Prime Videoにて独占配信中)は、日本で2022年9月に公開されるや予想外の反響が広まった。夫婦が育てる子どもはアダと名付けられるが、その“アダちゃん”がキャラクターとしてマニアックに愛されるなど、映画を観た人の多くを虜にしている。ある意味で、2022年を代表する映画のひとつになったと言ってもいいほど。
日本でのヒットを受け、アイスランド在住のヴァルディミール・ヨハンソン監督が来日。公開前とは違い、すでに多くの人が観ているので、アダちゃん撮影時の秘密や、ラストの衝撃展開も含め、改めて本作への想いや、今後の新作の予定などを聞いた。
※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
「羊のかわいらしさと美しさは別格で、今回の映画に最適だったんです」
本作は日本はもちろん、アメリカなど各国でもヒットを記録した。この不思議で奇怪な世界が、どうしてここまで多くの人を夢中にさせたのか。ヨハンソン監督自身も、その理由はよくわからないという。「これほどの反響は私にとっても予想外で驚いています。だから、ヒットした理由をちゃんと答えられる自信もありません(笑)。強いて挙げるなら、主演のノオミ・ラパスが有名俳優であること。家族のドラマを描いていること。そこに多くの人が好きそうなシュールな要素がうまく絡んだからじゃないでしょうか」。
本作が観客にどう受け止められるか。そこに関しては「観た人に、ひとつの解釈を与えるのが好きではないので、どんな反応でもいい。観客に映画の一部になってもらいたいのが私の本心です」と、あくまでも自身が込めたテーマを語らないヨハンソン監督。しかし“羊”を描くことに迷いはなかったようだ。
「祖父母が農場を営んでいて、私もそこで長い時間を過ごしていました。羊ではない動物を選択する余地もあったとはいえ、羊のかわいらしさと美しさは別格で、今回の映画に最適だったんです。犬や猫は私向きではないし、まあいつか別の映画で活躍してもらいましょう(笑)」。
アダは、羊と人間のハイブリッド。こうした動物と人間がミックスされたキャラクターは、狼男、半魚人、蛇女、また日本でも妖怪などに見受けられ、多くのカルチャーで親しまれている。アイスランドではどうなのか。動物や自然との関係に国民性も絡んでいそうだ。
「アダのキャラクターは脚本を書きながら生まれたもので、アイスランドの文化にアダのような前例はありません。われわれはファンタジーとして、幽霊、トロール(妖精)、あるいは水の中に住む馬などが身近です。動物と人間のミックスは、単に私が魅了された造形と言っていいでしょう。ただアイスランドには、大自然に対する独特の敬意があると思います。基本的に残酷なまでに厳しい自然に対し、ひとつの人格のように畏怖を抱いており、われわれ人間は逆らえません。そこから民話や寓話が生まれやすいのかもしれません」。
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