映画1本分のカロリーを40分に凝縮?緩急のバランスが見事な「ガンニバル」第3話レビュー
息もつかせぬアクションシーンの連続、トップクリエイターによる秀逸な映像表現に驚愕
第3話は緩急のバランスが絶妙で、前述のとおり過去編で“動”の展開で畳みかけ、現代パートで「ましろが見つけた指は狩野のものでは?」といった謎解き要素をじわじわと、大悟と妻、有希(吉岡里帆)のドラマ部分をしっとりと“静”のトーンで魅せる。阿川家の絆を描くシーンでも裏で睦夫の拷問シーンや謀略を仕掛けるさまを走らせており、緊張感が揺らぐことは一切ない。脚本担当、大江×片山監督の構成力が光る仕上がりだが、これらの技巧で積み上げたシーンの最後に待ち受けるのが、怒涛のカーアクション×銃撃戦だ。
トンネル内を走行する大悟たちの前にゴミ収集車が滑り込んできたかと思うと、後部の投入口が開き、やおら睦夫が銃撃!驚く間もなく横付けしてきた車が体当たりし、背後からはスリップした車が宙を舞い、激突してくる。撮影監督、池田直矢による車内を縦横無尽に移動する超絶技巧のカメラワーク然り、息もつかせぬ畳みかけに度肝を抜かれることだろう。2022年のアクションシーンにおけるハイライトの一つはNetflix映画『アテナ』の超長回しの襲撃シーンだったが、『カーター』や『グレイマン』『NOPE/ノープ』然り、進化し続ける世界の映像表現に喰らいつく気概をビンビンに感じさせる一連のシークエンスは、特に必見だ。
しかもここで過去編が入る粋な演出(窓ガラスが割れるシーンでつなぐ上手さ!大悟が意識を失う=過去がフラッシュバックというルール付けも絶妙だ)からの現代に戻って銃撃戦が始まる展開でまたも視聴者を釘付けにし、そこからは過去×現代の銃撃シーンがミックスされることで大悟の「銃を撃つ」心理描写をもカバー。パトカーのドアの下から足を狙うという戦術、血のりの容赦ない使いっぷりも説得力があり、個人的には画作りや睦夫のビジュアルに『ダークナイト』(08)を彷彿したりもして大いに満足させられた次第。酒向と言えば『検察側の罪人』(18)での異常性をたぎらせた怪演や『沈黙のパレード』(22)での名バイプレイヤーぶりが記憶に新しいが、柳楽との鬼気せまる対決も見もの。「ガンニバル」第3話は、映画1本分のカロリーを40分弱に詰め込んだ、まさに観る者が“喰われる”レベルの内容となっていた。
文/SYO