滝藤賢一と渋谷すばる「周りは全員敵だと思っていた」!?意外な共通点を持つ2人が語る、共鳴し合う想い
“オネエ”仲間である“なっちゃん”の突然の死をキッカケに、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)の3人のドラァグクイーンがなっちゃんの地元である岐阜県・郡上八幡へと向かうロードムービー『ひみつのなっちゃん。』(公開中)。なっちゃんがオネエであることを知らない家族の為に、秘密を守り抜こうと“普通のおじさん”になりきる3人が繰り広げるハートフルなヒューマンコメディである本作は、田中和次朗による完全オリジナル脚本・初の監督作品としても注目されている。そんな田中監督が主演を託した滝藤賢一と主題歌を託した渋谷すばるとは?『ひみつのなっちゃん。』を介して出逢った2人が、この物語を通して感じたこととは?俳優とアーティストというまったく異なる立場にある滝藤と渋谷に、それぞれの立場から感じた『ひみつのなっちゃん。』と、共鳴し合う想いを語り合ってもらった。
「『ないしょダンス』は背中を押してくれる曲で、この映画をしっかりと代弁していた」(滝藤)
――滝藤さんと渋谷さんは、それぞれ主演と主題歌をご担当されているということで、今回対談をお願いさせていただいたのですが、滝藤さんは主演を務められたこの作品を、どのように受け止めていらっしゃいますか?
滝藤「自分らしく生きるってことを改めて考えさせられる映画であったなと感じています。演じさせていただいた主人公のバージンの、肉体の衰えとか、第一線にいられなくなった気持ちとか、若い2人(モリリンとズブ子)の踊りを見て嫉妬している部分とかに、すごく共感したんです。僕も歳を取って体力の衰えを感じているので、違った方法で戦っていかないといけないというところで、若い子の芝居を見て嫉妬があったりしますからね。そういう意味でもとても共感できた作品でした」
――渋谷さんは主題歌をご担当されていかがでしたか?
渋谷「僕もそうでした。主題歌の『ないしょダンス』は、台本を読んで書かせていただいた楽曲でしたけど、自分自身と重なる部分をすごく感じたんです。歌詞の中に“じゃあ普通って何なんだろ”ってあるんですけど、この物語の中で強く感じたことでもあったし、僕自身がいつも感じていたことでもあったので、本当にすごく共感できたんです」
滝藤「『ないしょダンス』は背中を押してくれる曲だったなと感じてます。まさしく“じゃあ普通って何なんだろ”っていう部分には、最初に試写で聴いた時にハッとさせられたというか。今回のバージンにも当てはまってるんだけど、自分自身に重ねちゃったんだよ。ずっと小さいころから“普通って何なんだよ”とか“みんなと一緒って何なんだよ”って思いながら生きてきたので。でも、きっと共感する人は多いんじゃないかなと思うんですよね。田中監督は、年齢を重ねて衰えを感じて自信を失って、踊ることを辞めてしまったバージンが、映画のラストシーンで踊るのか踊らないのか、どっちを選択するなのかな?っていうところで終わりたかったみたいなんですよね。僕も演じている時は、そこをどうしたらいいのか考えさせられていたんです。結果、彼がその先踊ったかどうかは映画を観てくれた方々が想像してもらう感じになっているんだけど、僕自身は試写で見た時、『ないしょダンス』がラストで流れたのを聴いて、“あぁ、もうそういうところじゃないな。ここでこの映画は成立したな”って感じたくらい、『ないしょダンス』はこの映画をしっかりと代弁していた感じがしたんですよね」
渋谷「ありがとうございます。こんなにうれしいことはないです。今回映画の主題歌を書かせていただいて、改めて主題歌の役割というか、大切さを感じることが出来たんです」
滝藤「すごく重要だと思う。映画のラストに流れる曲は、ある意味その映画を締めくくるものになるからね。今回は本当にこの映画が伝えたかったことそのものだったなと思いましたよ。曲も勢いがあってカッコ良かったし」
渋谷「本当にうれしいです」
――滝藤さんに役作りのお話もお聞きしたいのですが、主演のバージン(ドラァグクイーン)を演じられる上で、何か月も前からオネエになりきっていらしたとお聞きしたのですが、いつも時間をかけて役に入るんですか?
滝藤「いや、今回に限ってでしたね。今回は特別。所作とかもあるし、急にはなれないから」
渋谷「あの…お家でもそうだったんですか?僕、映画観て感動したんですよ。すごいなって。所作とか、とにかくいろんな動き一つとってもすごくて。完璧に女性でしたもんね。これいきなりできるものじゃないだろうなって思ってたんですよ。お家でも練習されてたんですか?」
滝藤「お家でも練習してました(笑)。今回ばかりはね、自分が信じられなかったんですよ。“はい、本番!”って言って、スッとできるものじゃないなと思ったというか。すごく嘘くさくなっちゃうと思ったんです。自分が嘘くさくて。自分を騙しきれなかったというか、役を生きる自信がなかったんですよね。だから、何か月も前から女性らしさを研究して、所作を自分の癖にするくらい叩き込んだんです。自分を騙す為にも、ずっと。(左手を、曲げた右の肘に付けて、右手は小指を立てる感じで口元に当てる仕草で)こうやって奥さんのこと見てたりしてた(笑)」
渋谷「あはははは。奥さんは、なんて?」
滝藤「“辞めて”って本当に嫌がってた(笑)。ずっとやってたから」
――お子さんは?
滝藤「娘は喜んでましたね。パパが女性になって綺麗になるのがうれしかったみたいで。すごく興味持ってたし。バージンのメイクと衣装で踊るシーンの時は、撮影現場に観に来てました。“私のパパ!”って感じで目をキラキラさせて(笑)。普段一切そんなことないのに。それもすごく意外でしたけどね」