ソフィー・マルソーが明かすフランソワ・オゾンとの初めての仕事「絶対に落ちない綱渡りをしているようなもの」

インタビュー

ソフィー・マルソーが明かすフランソワ・オゾンとの初めての仕事「絶対に落ちない綱渡りをしているようなもの」

ラ・ブーム』(80)でフランスのトップアイドルとなって以降、フランスを代表する女優として、いまも輝き続けるベテラン女優、ソフィー・マルソー。最新作『すべてうまくいきますように』(2月3日公開)では、『8人の女たち』(02)や『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(19)など、良質な人間ドラマを紡いできたフランソワ・オゾン監督と、満を持しての初タッグを組んだ。そんなマルソーに、オゾンとの撮影秘話を聞いた。

本作は、ある男の尊厳死を巡り、家族の葛藤を浮き彫りにしていく意欲作。人生を謳歌していた父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が突然、病に倒れる。その後、不自由な身体となった現実を受けいれられない父は、順調に回復するも、エマニュエル(ソフィー・マルソー)に人生を終わらせるのを手伝ってほしいと懇願する。その後、エマニュエルは妹のパスカルとともに葛藤しながらも、スイスの合法的に安楽死を支援する協会とコンタクトをとっていく。

――オゾン監督は長年、マルソーさんとの仕事をしたいと熱望していたそうですが。

突然、病に倒れた父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)
突然、病に倒れた父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

「一緒に仕事をしたいという希望はどちらも持っていました。フランソワによると、これまで実現しなかったのは、タイミングがふさわしくなかったか、もしくは役柄がふさわしくなかったからで、一緒に仕事をしたいという希望はどちらも持っていました」

――今回その願いがようやく叶ったわけですね。

「『すべてうまくいきますように』では、脚本を読む前から、心構えができていました。フランソワからのオファーを断ることなんてできないと思っていましたが、脚本に納得もいったし、この企画は私にぴったりだと感じました。映画は多様な願いの交差点であり、監督と仕事をして、役柄を演じ、テーマを模索して、その瞬間を経験するもの。そういう意味で、本作は美しい交差点でした」

「フランソワは、社会とその弱点を観察する鋭い目を持っています」

――これまでのオゾン監督作の印象についても聞かせてください。

【写真を見る】現在56歳!いまもなお可憐なソフィー・マルソーのオフショット写真
【写真を見る】現在56歳!いまもなお可憐なソフィー・マルソーのオフショット写真[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

「私は昔から彼の映画が大好きでした。彼は折衷主義的な監督であり、エネルギッシュだし好奇心旺盛で、社会とその弱点を観察する鋭い目を持っています。特に『海をみる』(97)に感動しました。『まぼろし』(01)、『スイミング・プール』(03)、『エンジェル』(07)も大好きでした。キャラクターは非常にロマンチックで、とてもいい人とは言えないけれど、それでいいんです。自分勝手な人々についての映画を作る意義はありますから。『すべてうまくいきますように』でも、父親のキャラクターがそれを証明しています」

――本作の原作者を手掛けたエマニュエル・ベルンエイムのことはご存じでしたか?

「脚本家としてのエマニュエルについては、彼女が様々な監督と一緒に手掛けた作品を通じて少しだけ知っていましたが、著書として彼女が書いた本については触れたことがなかったです。フランソワから『すべてうまくいきますように』の原作本を渡されて、その著者が彼女だと知りましたが、少し読んだだけで、死に対する心理状態と悲哀に引き込まれました。彼女の物語は過激ですが、暴力的でも残忍でもなく、真実の響きがあります。また、フランソワとエマニュエルの創作過程が似ていることも印象的でした」

――2人の創作について、どんな共通点を見いだしたのですか?

左から・ジェラルディーヌ・ペラス、フランソワ・オゾン監督、シャーロット・ランプリング、ソフィー・マルソー
左から・ジェラルディーヌ・ペラス、フランソワ・オゾン監督、シャーロット・ランプリング、ソフィー・マルソー[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

「事実に基づくストーリーテリング、ほどよいテンポ、完璧な組み立てにおいて同じ嗅覚を持っていると思いました。キャラクターをもっと分析的に描くこともできるけれど、そうしないで、ユーモアと自発的行為から人生にアプローチすることを選んでいます。それは、ある美術展を見たあとに、次の美術展へ行ったり、ランチデートをハシゴしたりするような感じです。2人は実際的な審美眼を持っている人たちで、世間話や愚痴で時間を無駄にしません。

エマニュエルとフランソワは、具体的なディテールを通じて人生を表現する手法も同じです。そうしたものをレンズ代わりに使い、人間という小さな存在における大変動を模索し、人間がそうしたものにどう対処するかを描こうとするんです。まさに2人は共に仕事をするためにいたような存在だったのではないかと」

――本作のように、実在の人物を演じる場合、どんなことを意識しますか?

主人公のエマニュエル役を演じるソフィー・マルソー
主人公のエマニュエル役を演じるソフィー・マルソー[c]2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

「個人的には、役を演じる際に実在か架空かでキャラクターを区別することはないです。だからエマニュエルのコピーになることは不可能でした。見た目はまったく似ていないし、似せようとするのも見当違いなので。この物語は強烈に、そして普遍的に人々を惹きつけるものを持っていました。


もちろん、彼女の色や服装の趣味はかなり合わせましたし、服の着こなしは役柄作りにとても役立ちました。エマニュエルはあいまいな色、青、灰色、黒などが好きで、実用的かつ着心地のいい服を好みました。また、よくスニーカーを履いていたことからも、彼女がどれだけ地に足の着いた人だったかとか、彼女の人生哲学をよく知ることができました」

関連作品