これまでは序章にすぎなかった…?“最後”まで見逃し厳禁「ガンニバル」最終話レビュー

コラム

これまでは序章にすぎなかった…?“最後”まで見逃し厳禁「ガンニバル」最終話レビュー

ディズニープラスの「スター」にて独占配信中の「ガンニバル」。柳楽優弥が主演を務め、『岬の兄妹』(19)、『さがす』(22)の片山慎三が監督、『ドライブ・マイ・カー』(21)の大江崇光が脚本を務めるなど、日本のトップクリエイターが集結したオリジナルシリーズだ。山間に位置し、外界から隔絶した供花村に赴任した駐在員、阿川大悟(柳楽)。「人が喰われているらしい」という恐ろしい噂が囁かれるこの村で、ある事件の捜査をきっかけとして、徐々に狂気の世界へ陥っていく。MOVIE WALKER PRESSでは、圧倒的クオリティと実力派ぞろいの俳優陣で贈る、野心的な本作の魅力をレビュー連載でお届けする。最終話の第7話はライターのイソガイマサトが担当する。

※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

秀逸なストーリー展開で明かされてきた、供花村の恐ろしい実態

前任の狩野にも協力していたというオカルトサイト「クロニクル」の管理人、宇多田(二階堂智)
前任の狩野にも協力していたというオカルトサイト「クロニクル」の管理人、宇多田(二階堂智)[c]2022 Disney and its related entities

集落では、忌まわしい伝統や風習が古から脈々と受け継がれているものだ。本シリーズの後半では、常人には到底理解できないそんな供花村の禍々しい風習が白日のもとに次々にさらされ、観る者の背筋を凍りつかせた。第4話のラストから第5話では村人の誰かに自分の顔の半分を喰われた寺山京介(高杉真宙)が姿を現し、大悟の前任の駐在、狩野治(矢柴俊博)に協力していたオカルトサイト「クロニクル」の管理人、宇多田(二階堂智)によって「祭の際に喰われる子どもたちが供花村のどこかにいる」ことも明らかになった。

死産を偽装し、祭で奉納する子どもを調達してきた銀(倍賞美津子)
死産を偽装し、祭で奉納する子どもを調達してきた銀(倍賞美津子)[c]2022 Disney and its related entities

さらに第6話では、村のリーダーであるさぶ(中村梅雀)の娘、加奈子(山下リオ)が、助産師をしていた後藤家元当主の銀(倍賞美津子)が死産を偽装し、子どもを連れ去ったことを大悟に告白。と同時に、死の間際、笑いながら狂っていったという銀の病気が、弔いのため死体を食す部族の間で流行したと言われる「クールー病」に酷似していたことも発覚する。これで、後藤家の間では人間が人間の肉を食べる“カニバリズム”が行われているのではないか?という大悟の想像が確信へ。大悟は、妻の有希(吉岡里帆)と娘のましろ(志水心音)を安全な場所に逃がすと、無謀にも後藤家に単身で乗り込もうとするが、視聴者の悪い予感は的中。彼の行動を察知していた後藤岩男(吉原光夫)にすぐに見つかり、ボコボコにされ、意識を失ってしまう。第6話は最悪な結末で幕を閉じた。

最終話でも怒涛の展開!次々と衝撃の新事実が…

最終話となる第7話は、岩男に痛めつけられ、顔中傷だらけの大悟が後藤家に連れ込まれる陰惨な場面から始まる。椅子に縛られ、さらなる暴行を受けながら、大悟は“子どもたちが監禁されている”ことを伝えてきた密告者が誰なのかを追求されるが、彼自身も知らないし、答えられない。代わりに、「俺は子どもたちを救えればそれでいい。この件からいっさい手を引く」と提案するも、後藤家の次の当主、恵介(笠松将)はじっと考えたまま口を開かないから、気が短い後藤家の若い衆たちが一斉に大悟に猟銃を向ける。ああ、もうこれで完全に終わった…そう思った視聴者も多かったに違いない。

単身後藤家に乗り込んだ大悟、絶体絶命かと思われたが…
単身後藤家に乗り込んだ大悟、絶体絶命かと思われたが…[c]2022 Disney and its related entities


ところが、ここから思いがけない展開に。供花村の村長で恵介の父親でもある後藤清(六角精児)から相談を受けた諸辺警察署の署長(利重剛)がやって来て、大悟を難なく救出。最終話だというのに、ここから新たな局面を迎え、闇をさらに深くしていくのだ。

次々に暴かれる新事実の数々…。だが、それらを謎解きミステリーのように、ただパズルのピースをハメていくような見せ方をしないところが第7話の大きなポイントだ。第3話以来のメガホンとなるメインディレクターの片山監督は、事実を一つ一つ明かしながら、その裏にある人間の狂おしい業や性をじわじわと炙り出し、観る者の胸をかき乱していく。

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