「『ラ・ラ・ランド』と『バビロン』は“いとこ”のような関係」デイミアン・チャゼル監督が語る、ハリウッドの二重性
『セッション』(14)、『ラ・ラ・ランド』(16)、『ファースト・マン』(18)と、これまでも映画の新たな地平を切り開き、『ラ・ラ・ランド』では第89回アカデミー賞監督賞を史上最年少(当時32歳)で受賞。若くして巨匠の地位に駆け上がったデイミアン・チャゼル。その新作『バビロン』(公開中)は、またしても映画ファンの心をときめかせる一本となった。
1920年代のハリウッド黄金時代。映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)と、野心に燃える新進女優のネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)、サイレント映画の大スター、ジャック・コンラッド(ブラッド・ピット)らが織りなすドラマチックな物語で、当時のハリウッドのゴージャスかつ狂乱の世界を体感させる『バビロン』。チャゼルにとって、これは念願のプロジェクトだった。作品に注いだ情熱や、当時のハリウッドへの想い、さらに撮影時の予想もしなかった瞬間などを、独占インタビューで聞いた。
「アイデアを思いついたのは15年前。でもその時点で自分には絶対に撮れない作品だとわかっていた」
『バビロン』はハリウッドへの愛があふれた一作で、超ベテランの監督がキャリアの集大成として撮ったような渾身の仕上がり。現在38歳のチャゼルに「集大成」という言葉はまだ早い気もするが、本人はどんな心構えだったのだろう。「間違いなくハードルの高い作品でした。ただ集大成というより、僕にとってこれからの監督人生を前に進める作品になったと言えそうです。『バビロン』のアイデアを思いついたのは15年前。でもその時点で自分には絶対に撮れない作品だとわかっていたので、とにかく多くのジャンルの映画に挑み、業界のルールを身につけ、ほかの映画からいろいろ吸収し、そうした経験を肉体に染み込ませる必要があったのです」。
企画を温めていた15年間、チャゼルの頭には常にアイデアが湧き、本作への情熱が途切れることはなかったようだ。「ハリウッドの歴史は常に僕を魅了してきましたが、大まかな流れを知っているだけで、核心はぼやけていました。ですから実際に起こったことを調べていくうちに、撮影の舞台裏のとんでもない状況や衝撃のエピソードに出会い、そこを映画で撮りたいと自覚したんです。ちょうど『ファースト・マン』を撮り終えた2018年の終わりくらいに、ようやくタイミングが来たと『バビロン』に取りかかりました」。