「『ラ・ラ・ランド』と『バビロン』は“いとこ”のような関係」デイミアン・チャゼル監督が語る、ハリウッドの二重性
「『ラ・ラ・ランド』と『バビロン』は、言ってみれば“いとこ”のような関係」
ハリウッドの歴史への愛。そのチャゼルの想いは、『ラ・ラ・ランド』にも少しだけ反映されていた。映画製作の現場をテーマにすることがひとつの嗜好なのか尋ねると、彼はやんわりと否定する。
「そこはなんとも言えないですね。“映画にまつわる映画”に関して、僕の頭にあったのはこの2作だけですから。『ラ・ラ・ランド』と『バビロン』は、言ってみれば“いとこ”のような関係です。前者はロマンティックな要素があり、後者は悪夢的で露悪的な部分もある。ハリウッドの複雑さ、豊かさを語るうえでは、その両面が必要なんですよ。あの有名なハリウッドのサインは、きらびやかなモニュメントであるのと同時に、飛び降り自殺の名所としても知られています。夢と悪夢の共存。光と闇の二重性。それこそが『バビロン』で僕がやりたかった、ハリウッドの核心なんです」。
そんなハリウッドの二重性を『バビロン』は冒頭から突きつけてくる。映画スタジオのド派手なパーティ、その裏での目を疑うような描写が、怒涛のような映像で展開していくのだ。「パーティの喧騒で始めるのは、映画として異例かもしれません。『バビロン』は多くのキャラクターが登場するので、その関係性をまとめて示すうえで、ひとつのスペースに集めるのは好都合だったのです。この点はフェデリコ・フェリーニの『甘い生活』からの影響が大きいですね。一連のパーティシーンを通して、キャラクターや物語のプロセスを描いたつもりです。中盤でハリウッドがトーキーに移り変わった時には、やや上品になった世界を反映させましたし、さらに終盤では、もう一度ダークな世界を表現するために恐ろしいビジュアルを入れ込みました。パーティが社会の変化を物語っているんです」。
そのパーティのシーンを中心に、撮影ではかつてない苦労を経験したというチャゼル。「これまでの監督作と違って、すべての流れを細かく統括するという挑戦になりました。セットと視覚効果の関係、大勢の俳優のスタントやダンスの細かい組み合わせ。それらをどうフレームに収め、エキストラをいかに多く見せられるか。セットを360度使いこなし、立体的に撮るプロセスは、毎日ダッシュを強いられている感覚でした。そして編集段階では、僕もパーティの客の気分になって世界に没入していったのです」。