『トップガン マーヴェリック』がアカデミー賞作品賞を獲る可能性は?ハリウッドの救世主、トム・クルーズを軸に占う!

コラム

『トップガン マーヴェリック』がアカデミー賞作品賞を獲る可能性は?ハリウッドの救世主、トム・クルーズを軸に占う!

スティーヴン・スピルバーグも感謝!トムはハリウッドを救ったヒーロー

なにより、『マーヴェリック』は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた映画業界に希望の光を与えた。コロナによって映画館は休業も余儀なくされ、自宅でも映画を楽しめる配信が主流になりつつあった。そんな状況のなか、『マーヴェリック』は劇場スクリーンでの上映にこだわり、何度も公開延期を繰り返す。その結果、「映画館で体験する喜び」をもう一度、世界中の人々に教えてくれた。日本で2022年の洋画No.1のヒットを記録したように、アメリカでも驚異のロングランを達成。あのスティーヴン・スピルバーグ監督も、今年のアカデミー賞を前にノミネートされた面々が集まる恒例の「ランチョン(ランチ会)」で、トムに「君はハリウッドを救った。『トップガン マーヴェリック』は映画業界全体を救ったかもしれない」と感謝の言葉をかけたほど。まさに世界中の映画関係者、映画ファンを代弁したわけだ。

日本で2022年の洋画ナンバーワンのヒットを記録したほか、本国アメリカでも驚異のロングランを達成した『トップガン マーヴェリック』
日本で2022年の洋画ナンバーワンのヒットを記録したほか、本国アメリカでも驚異のロングランを達成した『トップガン マーヴェリック』[c]Everett Collection/AFLO

『トップガン マーヴェリック』にとって意外にも有利な作品賞の選出方法とは?

かつてのアカデミー賞は、シリアスな作品、社会派テーマなどが重視されたが、近年は多くの観客に歓迎された作品も候補に上るようになった。今年も『マーヴェリック』と『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』という2つの特大ヒット作が作品賞にノミネート。これは異例のパターンで、アカデミー賞が変わりつつあることを実感できる。

第95回アカデミー賞で最多の10部門11ノミネート(助演女優賞部門で2人)を果たしている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』(公開中)
第95回アカデミー賞で最多の10部門11ノミネート(助演女優賞部門で2人)を果たしている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』(公開中)[c] 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

とはいえ、今年のアカデミー賞作品賞には強力なライバルもいる。最多の10部門11ノミネート(助演女優賞部門で2人)を果たした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)だ。同作は前哨戦で多くの賞を制しているが、アカデミー賞作品賞は逆転劇も起こりやすい。投票のシステムが特殊だからだ。世界中のアカデミー会員が、作品賞ノミネート作に1位から10位まで順位をつけて投票。最初の集計で最下位になった作品が外され、今度は9本の順位で争われ…が繰り返され、最終的に残ったものが作品賞となる。つまり極端に評価が分かれる作品は選ばれにくく、むしろ多くの投票者が2~3位くらいに入れた作品が有利だったりするのだ。その意味で『マーヴェリック』は広く愛された作品で、そこに映画業界への功績が加味されれば、作品賞も夢ではない。

かつての問題児が教官として再び戻ってきた!(『トップガン マーヴェリック』)
かつての問題児が教官として再び戻ってきた!(『トップガン マーヴェリック』)[c]Everett Collection/AFLO

トムの笑顔をアカデミー賞のステージで観たい!

前哨戦の一つ、ゴールデン・グローブ賞では、『マーヴェリック』が作品賞(ドラマ部門)にノミネートされながら、プロデューサーとしてトムは授賞式に出席しなかった。同賞を主催するHFPA(ハリウッド外国人映画記者協会)へのボイコットの意思を貫いたからだと考えられる(トムは過去に受賞したゴールデン・グローブのトロフィーを返還している)。その意味で、アカデミー賞では授賞式でトムの姿を見られるだけでも幸せだ。近年は、ブラッド・ピットらトップスターの受賞風景が視聴者のテンションを上げてきているので、その流れでステージ上のトムの笑顔を見たい人も多いはず。


教官役として、若手俳優たちをサポートする姿勢も渋くてかっこいい(『トップガン マーヴェリック』)
教官役として、若手俳優たちをサポートする姿勢も渋くてかっこいい(『トップガン マーヴェリック』)[c]Everett Collection/AFLO

36年の時を経て、マーヴェリックは新たな作品で、しかも同じ俳優が演じて復活し、世界の観客の胸を熱くさせた。その奇跡を締めくくるのがアカデミー賞授賞式であれば、最高のフィナーレとなるではないか!

文/斉藤博昭

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