オスカー最有力『エブエブ』を生みだした『アベンジャーズ』ルッソ兄弟の制作会社AGBOって知ってる?
開催が迫る第95回アカデミー賞で最多11部門のノミネートを果たし、大きな話題を集めている『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(公開中)。本作を手掛けているスタジオは、近年良作を連発し映画ファンにとって一つのブランドとして認知されているA24だ。そんなA24と共に制作プロダクションとして名を連ねているAGBOという会社をご存知だろうか?
ルッソ兄弟が設立!MCU俳優たちも積極起用!
AGBOは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)など近年のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品を牽引してきたアンソニーとジョーのルッソ兄弟らによって2017年に創設された新しい制作プロダクション。「次世代のストーリーテリングを革新、進化させ、世界中の視聴者を楽しませ、感動させること」をミッションに、映画、テレビシリーズ、デジタルメディア、ゲームなどあらゆるメディアで壮大なグローバルシリーズを構築することに尽力している。
ルッソ兄弟に加え、マイク・ラロッカ、トッド・マクラートといった映画プロデューサーが創設者として名を連ね、ルッソ兄弟の作品を数多く手掛けてきたクリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリーといった脚本家たちがクリエティブ面を支えるなど、スタッフは先見性と確かな能力を備えた熟練者ばかり。
さらに、『21ブリッジ』(19)ではチャドウィック・ボーズマン、『タイラー・レイク -命の奪還-』(20)ではクリス・ヘムズワース、『チェリー』(21)ではトム・ホランド、『グレイマン』(22)ではクリス・エヴァンスとMCUで構築してきた人脈をフルに活用した豪華なキャスティングで、持てる力のすべてを投入して良質なエンタメを生みだしている。
骨太な本格アクションはAGBOの十八番
そんなAGBO作品の特徴の一つがアクションのクオリティの高さだ。ルッソ兄弟といえば、ヒーロー対ヴィランの大合戦が描かれた『アベンジャーズ/エンドゲーム』を筆頭に、これまでMCU作品での、本格的で見やすい、誰もが楽しめるようなアクションが評価されてきた。
イラクを舞台に家族をISIS(イスラム過激派組織)に殺された者だけが入隊を許されるSWATの戦いを描く『モスル~あるSWAT部隊の戦い~』(19)では、本格的な銃描写や派手な爆発など重厚なミリタリーアクションで最前線の熾烈さを表現。
また、インドを舞台に誘拐された麻薬王の息子の奪還に挑む傭兵を主人公とした『タイラー・レイク -命の奪還-』でも建物の2階からの落下といった無骨で痛みが伝わるようなスタント、華麗なるナイフでの戦いなど多彩なアクションを盛り込んでみせた。
さらにスパイ同士の戦いを描いた『グレイマン』では、飛行機からの落下やトロリー上での格闘など大がかりでケレン味のあるアクションをリアルに見せる手腕を発揮。整理された撮影と最新鋭の技術によって見応えのある骨太アクションを成立させてきた。
新たな才能の発掘も!尖った企画も続々映画化
野心作が多いのもAGBOの特徴の一つと言えるだろう。というのもルッソ兄弟はもともと若手の資金援助や監督志望の作家の相談に乗るなど後進の育成に積極的で、AGBOの設立の目的にも新たな才能や社会的意義のある企画をフックアップする側面がある。
例えば『モスル~あるSWAT部隊の戦い~』は、アメリカ映画でありながら作品の舞台であるアラブ系の役者がキャスティングされ、言葉もすべてアラビア語で物語が展開するという、イラクの視点から戦争を描く意欲作だった。
新鋭のナタリー・エリカ・ジェームズ監督が、アルツハイマーの祖母とその娘、孫、3世代の女性を中心に“老い”がもたらす恐怖を描いた『レリック ―遺物―』(21)も、家族の関係性やジェンダーの問題、保守的世代の差別感情など様々な社会的メッセージが盛り込まれており、ホラー的な怖さはもちろん、考えさせるような深みを孕んでいた。