“愛と慟哭”のヒュー・ジャックマン…ウルヴァリンだけじゃない、演技派としての歩み
2008年に米ピープル誌の「最もセクシーな男」にも選出されたワイルド系イケメンながら、気取らない性格で同性からの人気も高いヒュー・ジャックマン。アカデミー賞2部門(主演男優賞、脚色賞)に輝いた『ファーザー』(20)のフロリアン・ゼレール監督による衝撃作『The Son/息子』(公開中)で苦悩する父親を演じ、その卓越した演技力を余すことなく披露している。ジャックマンといえば「X-MEN」シリーズのウルヴァリン役が真っ先に思い浮かぶが、演技派としての実績も多数。そこで今回は、ミュータントから苦悩する父親まで、これまでの出演作を振り返ってみたい。
『X-MEN』のウルヴァリン役で一気にブレイク!
イギリス人の両親のもと、オーストラリアで4人の兄姉と育ったジャックマン。シドニー工科大学でジャーナリズムを専攻した彼は、卒業後は西オーストラリア舞台芸術アカデミーで演技を学んだ。1994年にドラマデビュー、翌年に刑務所ドラマ「Corelli」シリーズに参加し、同作で共演した女優デボラ=リー・ファーネスと1996年に結婚。現在でも評判のおしどり夫婦だ。そして『Paperback Hero』(99)でスクリーンデビュー。オーストラリアでもテレビ、映画のほかにミュージカル「美女と野獣」、「サンセット大通り」などの舞台で活躍する人気俳優だった。
そんなジャックマンがハリウッドに進出するきっかけとなったのが、ブライアン・シンガー監督作『X-MEN』(00)だ。彼が演じたローガン/ウルヴァリン役は、当初、ラッセル・クロウが候補に挙がっていたものの、『グラディエーター』(00)を終えたばかりだったクロウが辞退し、代わりにジャックマンを推薦したというのはよく知られるところ。
このウルヴァリン役で世界的にブレイクしたジャックマンは、翌2001年にロマンティック・コメディ『恋する遺伝子』、サスペンスアクション『ソードフィッシュ』、メグ・ライアン共演作『ニューヨークの恋人』と立て続けに3本のアメリカ映画に出演。『ニューヨークの恋人』はのちに「X-MEN」シリーズでもタッグを組むことになるジェームズ・マンゴールド監督が手掛けたロマンティック・ラブストーリーで、ジャックマンは125年前から現代へとタイムスリップしてきた英国貴族レオポルドを好演。キャリアウーマンのケイトと恋に落ちる白馬に乗った王子様役をスイートに演じ、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。
『レ・ミゼラブル』『グレイテスト・ショーマン』での演技が高評価を獲得
また、ジャックマンはキャリアの初期には『ヴァン・ヘルシング』(04)、『プレステージ』(06)などの話題作に出演している。そして次なる注目作がバズ・ラーマン監督の手によるアドベンチャー・ロマンス『オーストラリア』(08)。なお本作で扮したカウボーイのドローヴァーも、クロウの辞退&推薦によっての配役だったため、ジャックマンは自身のキャリアにおける重要な2つの役を演じる機会を与えてくれたクロウには深く感謝しているのだとか。その後の『リアル・スティール』(11)では、“ロボット格闘技”を通して息子と絆を結んでいく父親役を演じるなど、様々な役柄にトライしている。
そして俳優としての重要作となったのが、名作ミュージカルを映画化した『レ・ミゼラブル』(12)だ。パンを盗んだかどで19年間服役させられたジャン・バルジャンの波乱に満ちた人生を描いた本作で主人公を演じたジャックマンは、その悲痛な胸の内を高らかに歌い上げ、第85回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされついに実力派の仲間入り。あわせて、第70回ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、演技派俳優としての一面を世界に強く印象づけた。
さらに、『プリズナーズ』(13)、『チャッピー』(15)など着実にキャリアを重ねていったジャックマンは、2017年には『LOGAN/ローガン』と『グレイテスト・ショーマン』(17)という、まったくテイストの異なる2作に出演。「ウルヴァリン」シリーズの3作目にしてフィナーレとなる『LOGAN/ローガン』は2029年を舞台にミュータントが絶滅の危機に瀕した物語で、ジャックマンはこれまでのタフでマッチョなダークヒーロー像とは打って変わったウルヴァリンことローガンの悲哀を鬼気迫る演技で体現。
また、彼が7年の月日をかけて準備を進めたというミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』では、19世紀アメリカに実在した興行師P・T・バーナムの半生を情熱的に演じて第75回ゴールデン・グローブ賞の最優秀主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にもノミネート。主題歌「This Is Me」は同賞の最優秀主題歌賞を受賞し、第90回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた。