黒澤明からの影響も!『長ぐつをはいたネコと9つの命』監督&プロデューサーが語る、人気キャラクターの新たな見せ方
「アントニオとサルマの関係性も、作品にいい影響を与えてくれました」(スウィフト)
ーーアントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック。本作のおもしろさは2人の理解度によるところが大きかったとのこと。プス、キティを確立するうえで、お2人はどのようなお話をしましたか?
クロフォード「作品のアイデアを伝えた段階で、アントニオとサルマが僕らよりもはるかにキャラクターを理解していると実感しました。アントニオに関して言えば、プスを20年以上やっているから、むしろ彼の意見を積極的に取り入れながら作っていこうと考えていました。教えてもらうことはとても多かったです。レコーディングでもめちゃくちゃアドリブをやってくれて、そのなかから選りすぐりのアイデアを採用して作り上げていきました。プスをよく知るアントニオだからこそ生まれたアイデアがたくさんあります。アントニオ自身も“新しいプス”の表現に乗り気で、たくさんのアイデアをくれました。この作品ですばらしいケミストリーが生まれたのはアントニオをはじめ、役者自身から来ていると言っても過言ではありません」
スウィフト「アントニオとサルマの関係性も作品にいい影響を与えてくれました。実際の2人は兄妹のような関係で、気軽にからかい合うこともできる間柄。今回のプスとキティはちょっと仲違いしているところから始まる設定で、映画の前半で馬鹿にしたり挑発したりする2人の小競り合いを、アントニオとサルマは遊び心を持ち、とても楽しみながら演じてくれました」
ーーアントニオ・バンデラスが20年関わってきたキャラクターですが、この作品においてのプスの見せ方、新しいプスの描き方は、どのようにアプローチしたのでしょうか?
クロフォード「アントニオ自身がプスの違った側面を映画で披露できることにすごくワクワクしていました。僕たちが今回一番見せたかったのはプスの“もろさ”。不屈なキャラクターで完璧に見えるプスにもみんなと同じように悩みもあれば不安もある。カッコいいヒーローにだってもろい部分があることを見せることが、大人にも子どもにもいいメッセージになると考えていました。自分の弱い部分、脆い部分を認めるのは『自分が強いからできること』というメッセージでもあるんです」
スウィフト「そんなメッセージに加えて、コロナ禍を経験している我々が、改めて命の大切さやその価値のようなものを感じられたうえで前向きになれる、そういう作品になることをアントニオ自身も願っていたし、ワクワクしながら取り組んでいるようでした」
ーーイベントやインタビューで日本語版吹替キャストから「トリビアに驚きがあり、おもしろい!」「ドリームワークスの本気度が伝わってくる」といった声をたくさん聞きました。お2人が好きなトリビアはありますか?
クロフォード「大好きな作品なので『全部!』ですね(笑)。でも、強いて挙げるならストーリーテラーとしての想いかな。いろいろな要素を詰め込むことでストーリーを重層的にし、キャラクターをより強いものとして見せたいと考えていました。だから実は隠れたメッセージというのはたくさんあるんです。ちょっとネタバレになるけれど、例えば金色の髪の少女ゴルディの賞金首のポスターが破れると『家族を求めています』というメッセージが出てきます。それは彼女がずっと家族を求めてきたから。でも、映画ではゴルディの周りに登場する木や石が、なにか意味のある形になっていたりします。実は最初から彼女の周りにはあったものだけど、気づかなかっただけ、という描写でもあるんですよね。そういうトリビアにあふれた作品になっています」
スウィフト「いままで8通りの死に方をしているプス。この死に方をセレクトする際には60以上のアイデアを出し合いました。残念ながら実現しなかったけれど、実は力士と対戦して潰されるというアイデアも最後の最後まで候補として残っていました。そんなふうに実現しなかった描写にもトリビアはたくさんあったなって、いまジョンの話を聞いていて思い出しました。採用に至らなくてもアイデアを出し合うこと自体をとても楽しみました」