1,500名超の人命を救助した元消防士が『ノートルダム 炎の大聖堂』を解説…「死者ゼロ」の奇跡を遂げた理由とは?

インタビュー

1,500名超の人命を救助した元消防士が『ノートルダム 炎の大聖堂』を解説…「死者ゼロ」の奇跡を遂げた理由とは?

「救助にあたり、命を懸けようとするのは素人。命を懸けず、ケガもせずに助け続けることがプロの仕事」

国際緊急援助隊員にしてニューヨーク州救急隊員で、これまでに34か国の消防防災経験があるカミヤ。人命救助者数は1,500名を超えるが、助けられなかった命も数多いと言う。「私が現役の時には、悲惨な現場だと1日3~4人ぐらいの人が、自分の左腕のなかで亡くなっていきました。恐らくこれまでに千何百人くらいの方が、この腕のなかで命を落とされたと思います。数十分前には、普通の生活をしていた方々が、突然事故や火事などに巻き込まれてしまう。私に限らず、当時の消防隊員たちは、命の大切さよりもはかなさを感じると同時に、人間は存在していること自体が大事なんだと痛感させられます」。

劇中では祈りが込められたキャンドルも印象的
劇中では祈りが込められたキャンドルも印象的Photo credit:Guy Ferrandis

カミヤが「“存在”を英語で言うと“being”。“Let it be”は『ありのままに生きろ』と訳されていますが、僕は『そこに有り続けろ』ということだと思います」という言葉には非常に重みがある。「では、命を失わないために、なにをしたらいいのか。大切なのは、まずは自分の生命、身体、財産、生活、自由の5つを自分で守り続けること。だから救助にあたり、命を懸けようとするのは素人なんです。命を懸けず、ケガもせずに助け続けることがプロの仕事です。誰しも生きていること自体に価値があります。キーワードは“be”で、本作はそういうことを伝えてくれる映画でもあるのかなと思います」。

『ノートルダム 炎の大聖堂』は4月7日(金)より公開
『ノートルダム 炎の大聖堂』は4月7日(金)より公開[c]2022 PATHÉ FILMS – TF1 FILMS PRODUCTION – WILDSIDE – REPÉRAGE – VENDÔME PRODUCTION


最後にこれから本作を観る方へのメッセージをもらった。「この映画では、大火災の現場という非日常体験ができるので、命や文化財について改めていろんな認識や考えを改めたり、視点が変わったりするかもしれません。そういう意味で、いろんな気づきを与えてくれる映画でもあるとも思いました。また、日本でも、消防士たちは寡黙に消防活動を行いますが、彼らが現場を引き上げる際にはぜひ拍手で見送ってほしいと思います。そしてパリに行った際には、ノートルダム大聖堂を訪ね、神の子イエスを抱いた聖母マリア像(聖母子像)の前で、黙祷を捧げていただけたらと」。

取材・文/山崎伸子

■サニー カミヤ
元福岡市消防局でレスキュー隊員、ニューヨーク州救急隊員、国際緊急援助隊員として、計34か国、約5,000件の様々な災害現場で消防活動し、人命救助した人数は約1,500名以上。現在、日本防災教育訓練センターの代表理事を務め、リスク&危機管理・防災・防犯、各種テロ対策コンサルタント等活動中。著書に、「みんなで防災アクション! 国際レスキュー隊サニーさんが教えてくれたこと」、「ペットの命を守る本: もしもに備える救急ガイド」など。

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