ファンの「シャマランが帰ってきた!」の声に本人は興味なし!?「僕はずっとここに座っていただけ」

インタビュー

ファンの「シャマランが帰ってきた!」の声に本人は興味なし!?「僕はずっとここに座っていただけ」

「僕の娘たちは、僕が作品のためなら、自宅を燃やすことだってしかねないことをわかっている(笑)」

 ゲイカップルと彼らの養女のもと、ある4人組がやってくる…
ゲイカップルと彼らの養女のもと、ある4人組がやってくる…[c] 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

本作はダークな映画ではあるが、同時に希望という余白を残している。これはほかのシャマラン作品にも共通する傾向だ。「世界が本質的に悪い、ネガティブな場所だとは、僕は思っていません。むしろ慈悲深い場所です。だからなにかうまくいかないことがあっても、心が傷ついても、大きな文脈で見れば大丈夫なんじゃないかと、僕は思っています。とはいえ、いまこの瞬間も、世界の終わりに向かってエスカレートしていくようなことが起きていて、それはとても怖いことです。地上のあらゆる人間が、100年以内にやり方を変えなければ、すべてが終わってしまう、そう僕は考えています」。

「同時に変化のスピードが速くなっているのも実感しています。以前は世代交代に25年かかっていたものが、いまでは5年で変わる。僕と、娘たちの世代とでは考え方も違うけれど、考え方の速度も異なる。娘たちの世代は、5、6年で自分たちの考え方を大きく変えたりもできるんです。それを踏まえると、すべては正しい方向に進んでいると思うことができますね。この映画にはちょっとした時限爆弾的要素として、『我々は果たして方向転換するのに間に合うような速さで、いま変化できているのか?』という問いかけが入っています。手遅れになる前に、我々は方向転換すべきではないでしょうか」。

 スリリングな展開に一瞬たりとも気が抜けない!
スリリングな展開に一瞬たりとも気が抜けない![c] 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

ご存知のとおり、シャマランはキャリアの初期に『シックス・センス』で脚光を浴び、『アンブレイカブル』(00)、『サイン』(02)とメガヒットを連発。これらを彼のマスターピースと考えるファンは多いが、一方では近年の『ヴィジット』(15)、『オールド』(21)など充実したスリラーに“シャマランが帰ってきた!”と快哉を上げるファンもいる。このような状況を、シャマラン自身は冷静に見ているようだ。

死者が見える少年と心に傷を負った精神科医が交流を通じて癒されていく姿を綴った『シックス・センス』はシャマラン監督の出世作
死者が見える少年と心に傷を負った精神科医が交流を通じて癒されていく姿を綴った『シックス・センス』はシャマラン監督の出世作[c]EVERETT/AFLO
不死身の男を巡る謎と陰謀がしだいに暴かれていく、衝撃のサスペンス『アンブレイカブル』
不死身の男を巡る謎と陰謀がしだいに暴かれていく、衝撃のサスペンス『アンブレイカブル』[c]EVERETT/AFLO

「観客が映画監督の“ストーリー”を口にするのは簡単なことですが、私自身はそれに関わらないようにしています。便利な“ストーリー”ではありますが、実際にはその10倍は複雑なものなのです。新作を発表する度に“帰ってきた!”と言われますが、そんな声を耳にすると『僕はいったいどこに向かっているんだ!?』と思ってしまう。帰ってきたもなにも、ずっとここに座っていただけなんですけどね(笑)」。


「とはいえ、監督として観客に自分の“ストーリー”を語られることは、ポジティブでよいことだと思っています。僕の映画に愛を持って接しているからこそ、語れることですからね。ただ、どんな“ストーリー”が語られるにせよ、僕にできるのは次の作品の脚本を書き、新しい映画を作ることだけです。自分の作りたいもののためなら、すべてを投げ出すでしょう。僕の上の娘2人もアーティストで、その一人、シャナは前作『オールド』に続いて、セカンド・ユニットの監督を務めています。彼女たちは外野の声に左右されない、僕の姿勢を知っています。僕が自分の作品のためなら、自宅を燃やすことだってしかねないことをわかっているんです(笑)」。

取材・文/相馬学

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