宮村優子&伊瀬茉莉也が語り合う「エヴァンゲリオン」がもたらした刺激。庵野秀明は「魂を削って、作品に注ぎ込む方」
「庵野監督との初めての出会いは16歳の時。『なんの作品をやっているんですか?』と聞いてしまった!」(伊瀬)
――宮村さんは、1995年にスタートしたテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」の時から庵野監督とお仕事をされてきましたね。
宮村「そうなんです。テレビシリーズのころは、時代もあって、現場には異様な空気が流れていました(笑)。私にとって『エヴァンゲリオン』はほぼデビュー作なので、なんという世界に飛び込んでしまったんだろうと思って。そこに立ち向かっていく先輩方の背中を見ることで、『きちんとキャラクターを担っていくぞ』という決心や覚悟ができました」
伊瀬「私が初めて庵野監督にお会いしたのは、16歳の時のこと。初めてのレギュラー番組が安野モヨコ先生の『シュガシュガルーン』という作品だったんですが、その作品を通して、その方が庵野秀明監督だとは知らずにお会いしたんです。私はアニメ映画の監督業に憧れてこの世界に入ってきていたので、『なんの作品をやっているんですか?』と庵野監督に聞いてしまって(笑)。すると庵野監督はニコニコと笑いながら『ウィキペディアで探してみてください』と、『ラブ&ポップ』のDVDをくださったんです。さらに『いつか一緒に仕事ができるといいね』とおっしゃってくださって、私は『いつか庵野監督と絶対にお仕事をするぞ』と思いながら進んできました。おそらく『なんの作品をやっているんですか?』という疑問をポンと投げかけたことが、庵野監督にとっては新鮮な印象として残ったのかもしれません。」
「私にとってアスカは、切っても切り離せない存在」(宮村)
――本シリーズは、たくさんの人の人生に少なからず影響を与えた作品だと感じます。お2人にとって、庵野監督や本シリーズとの出会いによって変化したことはありますか?
宮村「私も役者というものづくりの世界にいる一員として、庵野さんのクリエイターとしての姿を間近で見させていただいたことは、『作品は、こういう姿勢でクリエイトしていくものなんだな』と大きな刺激になりました。振り切って、人生のすべてをクリエイトにかけるということは、やっぱり相当な覚悟がないとできないものだと思います。私も伊瀬さんも、お母さんをやりながら役者をやっているので『どこまで役者に振り切れるだろうか』という課題はやっぱりあるものですよね。庵野さんの背中を見ることで、決死の覚悟でものづくりをしていくすごみのようなものを感じていました」
――アスカというキャラクターとの出会いはどのようなものになりましたか。
宮村「アスカちゃんと、こんなに長くお付き合いをするとは思っていませんでした。アスカを演じていくうちに、自分のなかにアスカとしてのもう一つの人生や、生き様が存在するようになって。もう一つ、人生を生きているような感じですね。だから私にとってアスカは、切っても切り離せない存在です。アスカとして生きることは、やっぱり大変でもありました。私は2004年に長女を出産しましたが、そのころに(『エヴァンゲリオン』の)テレビシリーズやその劇場版のお仕事と同時進行だとしたら、両立はできなかったかも、と思います。『新劇場版』は、私も親として何年生かになれていたからこそできた。その経験を注げたのかなと感じています」
――伊瀬さんはいかがでしょうか。
伊瀬「私にとって庵野さんは、トップをずっと走り続けている方。しかもものすごい熱量を込めながら、自分の人生や魂を削るようにして、そのすべてを作品に注ぎ込んでいる方です。世界中の人に作品を待ち望まれていることのプレッシャーも、きっとあるはずです。『それらを背負っている方には、この世界がどのように見えているのだろうか』と庵野さんの間近でその空気を感じさせていただけたことは、私にとってかけがえのない時間で、財産と言えるものになりました。またミドリとの出会いも、とても大切なものです。ミドリって『変よこれ!絶対変!』と言ってしまうような女の子なんですが、それは観客の方の気持ちも代弁しているようなところもあるのかなと感じています。今回の新規映像でまた深く掘り下げていただいたことで、ミドリの新たな一面を知り、私にとってもより大切なキャラクターになりました」
――「また空白の期間が描かれたらうれしい」と感じているファンも多いと思います。
宮村「もしかしたらなにかの気まぐれで、別の空白の14年も描かれるかもしれません」
伊瀬「個人的には、ものすごく観たいです!」
取材・文/成田おり枝