親の顔より見たモアイ?「EMOTION」40周年の歴史を、代表作や隠れた名作から振り返る
アニメファンの方なら一度は見たことがあるだろう、“モアイ像”のムービングロゴでおなじみの映像レーベル「EMOTION」。1983年に誕生し、今年で40周年を迎える同レーベルからは、いまや世界に誇るカルチャーにまで成長した日本のアニメーションの歴史に欠かすことのできない傑作・名作が数多く世に送りだされてきた。
そこで本稿では、「EMOTION」の40周年を記念して、OVA(オリジナルビデオアニメーション)を中心に代表する作品たちを一挙に紹介していきたい。
「EMOTION」の記念碑的作品、世界初のOVA「ダロス」の裏側に迫る
株式会社バンダイ・フロンティア事業部(現:株式会社バンダイナムコフィルムワークスが映像事業を継承)の映像レーベルとして設立された「EMOTION」は、1983年11月21日に第1弾商品となる6作品を発売。1983年12月16日には、世界初のOVAとなる「ダロス」を発売した。OVAとはテレビ放送されるテレビアニメや劇場公開されるアニメ映画とは異なり、映像記録メディア(ビデオ)の形態で発表される商業用アニメ作品のこと。ちょうど1980年代当時はビデオ産業の黎明期。まだ誰も見たことがないオリジナルのアニメ作品をいち早く手に入れることができるOVAは、アニメファンにとっての最先端だったといえるだろう。
「ダロス」は鳥海永行が原作・脚本を担当、押井守が脚本・監督を務め、スタジオぴえろ(現:ぴえろ)がアニメーション制作を手掛けた、全4話で展開するSF叙事詩。舞台は21世紀末。地球は人口の増加や資源の枯渇などの諸問題を月面開拓計画の実施によって解決する。しかしその一方で、月面開拓民のルナリアンたちが犠牲となっていた。そして地球の管理政権に不満を抱いた若きルナリアンたちが、真の自由を求めて革命の狼煙を上げるのである。
現在YouTube「EMOTION Label Channel」では、レーベルの設立40周年を記念した「EMOTION 40th Anniversary Program」特別番組が配信されており、その第1回は「ダロス」特集。作品にゆかりのあるゲストや解説者を迎え、レーベル設立の経緯から「ダロス」の制作の裏話などが語られている。
また同番組内では「EMOTION」を象徴するモアイ像のムービングロゴの誕生秘話も語られている。まさに“レーベルの顔”にふさわしいインパクトと、どことなくただよう神秘的な雰囲気で一度見たら忘れられないこのムービングロゴは、「EMOTION」創設者である渡辺繁の指揮のもとに制作されたもの。自身が高校時代に観たNHKのドキュメンタリー番組「未来への遺産」に登場したモアイ像を思い出し、これこそレーベルを代表する顔にふさわしいと、ロゴデザインに入れ込むことを決めた。ムービングロゴは現在に至るまで4つのバージョンが存在しており、初期のムービングロゴのミュージックを手掛けたのは作曲家の後藤次利。番組内では貴重な初期の草案コンテも紹介されている。「EMOTION」ファンはもちろんのこと、「EMOTION」について知りたいという人にとっても見逃せない番組となっている。
こうして誕生した「EMOTION」では、「ダロス」を皮切りにその後も数多くの作品を発表してきた。『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(87)や『AKIRA』(88)、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)のような劇場公開作品、「カウボーイビバップ」などのテレビアニメはもちろんのこと、なかには「機動警察パトレイバー」や「逮捕しちゃうぞ」のようにOVAから拡大していった作品などもあり、ジャンルも世代を問わずに高い支持を集め続けている。