山下智久&新木優子『SEE HEAR LOVE』から受け取った愛と勇気。俳優業は「情熱をかけるに値する職業」
『私の頭の中の消しゴム』(04)のイ・ジェハン監督による最新作『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』(Prime Videoにて独占配信中。ディレクターズカット版が7月7日より劇場公開中)で、美しい純愛ストーリーに身を投じた山下智久と新木優子。目が見えなくなる病を患った漫画家の真治(山下)と、生まれつき聴覚障がいがある女性、響(新木)が強く惹かれ合っていく姿を体現し、観る者の心を奪う。MOVIE WALKER PRESSでは、本作のアジア地域を巡るプロモーションツアーに密着。イ・ジェハン監督と、原作者のNASTY CATの故郷である韓国で、山下&新木にインタビューを敢行し、本作から受け取った愛と勇気について語り合ってもらった。
「俳優業に挑むうえでは、いつも崖っぷち」(山下)
――ツアー最初の地である韓国では、イ・ジェハン監督と原作者のNASTY CATさん、そして韓国のファンとの対面が叶いました。本作の撮影もイ・ジェハン監督のもと、日本と韓国のスタッフ、キャストが集うグローバルなものとなりましたが、撮影現場で言葉の壁を超えた“愛”を感じた瞬間があれば教えてください。
山下「もちろん言葉の壁もありましたが、撮影が進むにつれてそれぞれの中身、人柄が見えてきて。誰もが明るさと一体感を持って、撮影に臨んでいた現場だと感じています。韓国のスタッフの方々は、言葉の壁があるからこそ、その一言一言の重みを感じながら、一生懸命に想いを伝えようとしてくれていました。そんな姿からも愛を感じましたし、時には変な言葉を教えてくれて、みんなで笑い合ったのもいい思い出です(笑)。撮影中の印象深かったエピソードは、撮影はものすごく寒い時期に行われたんですが、そのアングルから撮りたいということで、カメラマンさんが水のなかにバシャバシャと入っていったんです。『寒い!』と言いながらも『よし、よし!』と気合を入れている彼の様子を見て、『すごいな!僕も頑張らないと』と背中を押してもらいました」
新木「撮影初日のことでしたよね!本当にすごかったですよね。私もとても刺激を受けましたし、現場では常に愛を感じていました。イ・ジェハン監督は『どの瞬間も取りこぼしたくない』という想いを持たれていたので、2か月間の撮影期間ずっとカメラを回し続け、『常に本番中だ』と感じるような現場でした。スタッフさんたちも監督の意思を汲み取って全力で撮影に向き合っていましたし、いつも作品への情熱をたくさん伝えてくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。監督は、撮影後半になると目に見えてやつれていかれて…。撮影に入る前に『僕はその日の体力をすべて使い果たして、日々の撮影に臨むんだ』とおっしゃっていたんですが、本当にその言葉を体現されていました。私自身、響を演じるうえでは2日に一度くらい泣くシーンがあって、感情の起伏を表現するためにがむしゃらになっていました。監督をはじめ、足を止めずに一緒に走り続けている仲間がいるということが、私にとって頑張る糧になっていました」
――先ほどソウル市内の映画館、MEGABOX COEXで行われた舞台挨拶では、山下さんも「イ・ジェハン監督の情熱を分けていただいた」とお話しされていました。
山下「撮影前に、監督が『僕はこの先、あと何本の映画を撮ることができるかもわからない。一つの作品がこうして撮影、公開まで漕ぎ着けることができるのは大変なことなんだ』とお話しされていました。考えてみれば、いまこの瞬間も、どこかで誰かが一生懸命に企画を練っているわけですよね。無数にある企画のなかで、こうして公開できるというのは、本当にすごいこと。だからこそイ・ジェハン監督は、『この映画を自分のなかの最高傑作するつもりで撮ります』とおっしゃっていました。その監督の持つ熱が、現場全体に伝染していたような気がします」
――ものづくりをしていく過程では、常に新たなことにチャレンジしたり、プレッシャーを感じたりとあらゆるご苦労があるはずです。苦しみながら作品を生みだしている同志が世界中にいるということは、勇気をもらえることでしょうか。
山下「本当にそう思います。監督もインディペンデントで活動をされていて、常に崖っぷちのような感覚もあると思います。それは俳優である僕も同じで、もし作品がうまくいかなかったとしたら自分の評価にもつながる厳しい職業でもあります。同時に、だからこそ情熱をかけるに値する職業だなとも感じています。若いころの自分は甘えていたなと思う部分もありますし、イ・ジェハン監督の作品への向き合い方を見ていると、『毎回これが最後かもしれないという気持ちで挑みたい』という意識が芽生えました。ご一緒させていただき、本当に勉強になりました」
新木「私も、この現場でパワーをもらったし、学びの多い現場でした。このお仕事をしていると、一生懸命に頑張って作品をつくり、それがプラスの評価を受けることもあれば、マイナスの評価を受けることもある。『正解ってなんだろう』『いい評価をもらうためにはどうしたらいいんだろう』と不安を抱えてしまうこともありました。でも今回の現場は、言葉の壁を超えて一体感を味わうことができた。そのおかげで、目の前にいる監督、スタッフ、共演者の方々、台本に全力で向き合って、自分にできるすべてを出せばいいんだと改めて感じることができました。この気持ちは、いつまでも忘れたくないなと思っています」