祝30歳!のんが語る、映画に託した想い「言いたいことがセリフなら言えた」
「『Ribbon』を作ったことで、あの辛い時期を乗り越えられたような気がします」
そんなのんが、『Ribbon』を自らの脚本、主演で監督することは必然だったのだろう。本作は、コロナ禍で大学の卒業制作展が中止になり、1年かけて制作した絵画を自宅に持ち帰ることになった美大生・いつかの複雑に揺れ動く内面を、のんならではの映像美と語り口で描いている。
2020年、コロナ禍の影響で仕事が全てストップしてしまった時に制作を始めたとのんは話す。「家でじっとしていられなかったから、緊急事態宣言が出た時にすぐ脚本を書き始めました。もともと準備していたフェスもコロナで中止になって、みんなに『中止です』ってなかなか言えなかった時の悔しさを『Ribbon』に込めています。でもこれを作ったことで、あの辛い時期を乗り越えられたような気がします。それぐらい大切な作品ですね」。
数多くある表現の手段から“映画”を選んだことに、のんなりの考えがあるという。「映画はフィクションだからこそ、伝えたいことが直球で伝えられる気がしました。普段は言えないようなことでもセリフなら言えるし、私のなかの『伝えたい!』という気持ちの勢いと、映画がうまく合致したのだと思います」。
さらに、自ら主演したことにも明確な理由があると続け、「自分になら気兼ねなく厳しくできますよね。それに、撮っている人(監督)と同じ脳みそを共有している人が、真ん中で演技をすれば、自分が求めるムードやイメージが最短で実現できる。そこがいいんです」ときっぱり。
「演者としても、瞬発力が磨かれたような気がします。演者だけやっていると、待ち時間が長くなった時、眠くなっちゃうんですよ(笑)。なので、身体を起こして、五感を敏感にするのが大変だったりするんですけど、監督をやっていると脳みそが常にフル回転しているから、アドレナリンが出続けている状態で素早く動ける。エンジンをかけっ放しの状態にしておけばいいんだなっていう感覚をつかめたのもよかったですね」。
「脚本を書いている時は可笑しくて好きなところが、実際にやると感情に刺激されなくて」
話を聞けば聞くほど、監督と演者の二刀流を極めながら、のんのなかで表現者としての思考が渦巻いているのが伝わってくる。そこで『Ribbon』の劇中にある、卒業制作の絵を勝手に捨ててしまった母親に、いつかがキレる具体的なシーンの演出と芝居について尋ねると、「あそこは、どっちの立場にも共感できるシーンにしたかったんです」と瞬時に返ってきた。
「“お母さんが絶対に悪い”という見え方にはしたくなかったんです。でも、お母さんを演じていただいた春木みさよさんには、作品のテーマを伝えただけで、芝居の演出は特にしていなんです。娘さん相手に稽古をしたそうで、『ウザい!って言われたから、よし!と思ってきた』と話してくれて、絶妙な感じのお母さんをやってくれました」と、春木の演技を絶賛する。
一方で、同じ場面での自身の芝居に対するジャッジは手厳しい。「いつかが、自分の部屋にあった“なにか”がなくなっていることに気づくのを、グラデーションのように描いたシーンです。それまで美味しいご飯を食べていてご機嫌だったのに、少しずつ違和感を察知して、ついに爆発します。脚本を書いている時は、お茶碗とお箸を持って怒るという状況が自分でも可笑しくて、好きだったんですけど、実際にやってみたら意外と感情に刺激されなくて。あれは難しかったです」。
日本映画専門チャンネル 2023年7月26日(水)、27日(木) 19:00〜
【放送作品】
『Ribbon』
『さかなのこ』
「オフィス3○○舞台『私の恋人』」
「オフィス3○○舞台『私の恋人beyond』」
■日曜邦画劇場「Ribbon」
日本映画専門チャンネル 2023年7月16日(日) 21:00〜ほか
■日曜邦画劇場「さかなのこ」
日本映画専門チャンネル 2023年7月23日(日) 21:00〜ほか
※放送の詳細については公式サイトにてご確認ください。