清水崇監督が読者の質問に次々回答!GENERATIONSとの撮影現場で起きた恐怖体験、いままでで一番怖かった映画は?
「私自身霊感がなく、清水監督も霊感がないとお聞きしましたが、実際に見えないのに恐怖描写はどのようにして思いつくのでしょうか。また、怖い・怖くないの線引きはどこにあるのでしょうか?」(20代・男性)
「線引きですか…。自分の感覚を信じるしかないですね。同じものを見ていても、怖いと思う人も怖くないと思う人もいて、なかには笑っちゃう人もいる。万人に通じるとは思わないですけれど、これはいけるな、怖いなと思えるものを見つけていきます。撮影も編集も、音響も含めてすべてがうまくいった時にはうれしいですが、思いのほか観客の皆さんに刺さらなかったり怖がってもらえなかったりすることもあります。でも基本的には僕の場合、根底はいたずらから発しているので、笑いとちょっと似ていると思います。日常にどう違和感を持ち込んでいくか。違和感が積み重なって、どこへ連れて行けるかですね」
「これまで多くのホラー作品を手がけられてきたなかで、ご自身が『一番怖い!』と思うホラー演出を教えてください」(30代・女性)
「自分で作った作品のなかでですか!?難しいですねえ…。一番わかりやすいものとして『呪怨』の劇場版で伊藤美咲さんの布団の中に伽椰子がいるシーンがよく取り上げられますが、あれは自分が子どもの時に想像していたことをそのまま再現しているんです。そう考えると、怖がりだった子どものころの想像を映画に使うのが一番怖いのかなと自分では思っています。もちろんそれが上手いことハマってくれればいいんですけど。『ミンナのウタ』でいえば、ラストのシーンや、中務くんが遭遇するさなのお母さんのシーンが怖いと言われます。ちなみに他作では…『シャイニング』の双子姉妹でしょうか。あれは強烈でした」
「今までで一番怖かった映画はなんですか?」(50代・男性)
「野村芳太郎監督の『鬼畜』です。ホラー映画ではないので申し訳ないんですけど、幼少期にたまたまテレビ放送で見てしまい、いま観てもメインテーマを聴くだけで本当に怖い作品です。ホラー映画のなかから選ぶとしたら、『シャイニング』や『悪魔のいけにえ』ですかね。どちらも本当にホラーが苦手だったころに友だちから勧められて、ひいひい言いながら顔を手で覆って観ていた作品です。いま思えば、そのころ観ていたものにホラーの名作といえる作品がそろっていましたね」
「以前、『いつかコメディを撮りたい』というインタビューを拝見しましたが、どのようなコメディが撮りたいですか?」(30代・女性)
「実は一つは具体的なものがあって、学園ものの舞台劇の映画化です。実現したいとは思っているのですが、いつもホラー映画の企画ばかり優先されるのでなかなか行き着けずにおり…。実は「男はつらいよ」シリーズもすべて何度も観ているほどのファンですし、三谷幸喜さんもたびたびモチーフにしている『サボテン・ブラザーズ』などがすごいなと思っています。すれ違いや勘違いの構造をうまく使った作品ですね。それももとをたどっていけば『七人の侍』をコメディアレンジしているわけですし、全然違うジャンルからほかのジャンルへ持ち帰ることも可能だと思っています。
例えば、昔、『となりのトトロ』のホラー版を作って怖がらせてみたいと思っていましたし(笑)。逆にすごい怖いと思っている映画からコメディにできるかもしれない。どちらにしろ、会話と感覚だけじゃない表現で伝わるものができたらいいなと思っています。それはコメディでもホラーでもそうです。本当にうまくいけば、言葉なんて飛び越えて世界中に伝わる。日本でもフランスでもアメリカでも中国でも、どこでも通じる笑いが作れれば…。まあ、恐怖よりも笑いのほうが国によって文化が違うと思うので、笑いを生みだすのは難しいでしょうけど。だからこそ挑戦してみたいですね!」
取材・文/久保田 和馬