“大人の女性と少年”の組み合わせ、予定調和ではないアクション…行定勲監督が『リボルバー・リリー』制作秘話を語る
「普段はアクション映画を撮らない人間である僕が撮っているからこそ、ただのアクション映画ではない」
アクションがさらに美しく見える衣装が複数登場するが、白眉はやはり、ポスターにも採用された白いドレスだ。野村萬斎演じる洋裁店のオーナーが仕立て上げ、クライマックスの戦いを前に百合に着せることとなる。「萬斎さんがとあるインタビューで素敵なことを言っていたんです。『僕には、あの衣装がウェディングドレスにも見える』と。つまり、百合は“戦いと結婚した女性”であり、自分はその背中を押してあげることしかできないんだと。ロマンがありますよね。そういう深い解釈を出来る萬斎さんだからこそ出せる気品がありました。僕にとってもあの衣装は忘れがたいものになりました」と絶賛する。
百合を取り巻く男性キャラクターとして、忘れてはならないのが長谷川博己演じる岩見だ。百合に寄り添う弁護士の岩見は、元海軍。海軍士官学校に行って、“戦争なんかやるべきじゃない”という自分の思想が生まれたことで危険分子とされた人間だ。だが、どこか肩の力が抜けたようなキャラクター像になっていて、それは長谷川からのアイデアだったという。
「長谷川くんが僕に提示してきたのは、『海軍を辞めて世捨て人のような心境に至ったあと、結果的に軽やかさをまとっている。なにを考えているのかわからないような、癖のある人間』という岩見像だったんです。当初、僕は不器用なぐらい実直な男をやってもらったらどうかと思っていたんですけど、『いや、ひょっとすると金とかにも困ってないようなボンボンで、家族とかもいるかもしれない』とか、そんなことを言うんですよ(笑)。おもしろいなあ、と思いました。だけど、あの飄々とした感じの裏には、戦争での体験や、怒りや哀しみがある。複層的なキャラクターになりましたね」。綾瀬はるかを筆頭に、それぞれのキャストが自分の役柄を掘り下げ、体得していったことがわかるエピソードだ。
今回、地方プロモーションで新潟、福岡、仙台を巡った行定監督。監督は本作を、地方の映画館にもしっかり届けたいという意識が強かったそうで、「僕の作品の観られ方というか特性としては、男女のやり取りの機微みたいなものを描いていたり、舞台が都会だったりすると、やっぱり都市型でウケるものが多かったんです。でも、この映画は世代も場所も選ばず、入りやすい。誰もが知る綾瀬はるかが主演で、地方の人たちは時代劇にも造詣があると思います。普段はアクション映画を撮らない人間である僕が撮っているからこそ、ただのアクション映画ではない。ハードボイルドな作品を見慣れない人にも、安心して楽しんでほしいです」と、力強く語ってくれた。
取材・文/編集部