今石洋之監督&中島かずき、アニメの可能性を感じられた「天元突破グレンラガン」への想い告白「いまの自分があるのも『グレンラガン』があるから」
公開15周年記念プロジェクトとしてリバイバル上映されている『劇場版 天元突破グレンラガン』の舞台挨拶が9月6日にグランドシネマサンシャイン池袋で開催され、今石洋之監督と脚本の中島かずきが登壇した。
「天元突破グレンラガン」(2007年4月〜9月放送)は、『プロメア』(19)などを手がけたアニメーション監督、今石洋之の初めてのテレビシリーズ作品。鮮烈な演出やセリフ回しで国内外のアニメファンを魅了し、放送翌年の2008年には全セリフ録り下ろし、新規カットを多数追加した『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』『螺巌篇』が公開された。上映後の会場から大きな拍手に迎えられ、「ありがとうございます」と笑顔を見せた今石監督と中島。今石監督は「当時も『10年生き残る作品をつくるぞ』という意気込みでやっていました。15年経ってもまだこうやってを(映画を)かけてくれるというのは、さらにプラス5年、生き残ったんだなという思いがして。うれしいです」と15周年を迎えた感慨を語った。
公開から15年を経ても新たなファンを増やし続けている本作だが、2人にとっても特別な作品だという。今石監督は「『グレンラガン』の前は“自分一人で作る”みたいなスタンスでやっていたものが、『グレンラガン』は“集団で作る”ということを意識的にやった作品。それからその作り方でずっとやっているので、いまの基盤を作ったことには間違いがない。その後、トリガーという会社を作ったメンバーも、ほとんど『グレンラガン』のメンバー。そういう意味では、僕のなかでは『ここから始まった』という感じがあります」としみじみ。
中島は「僕もそうです。劇団☆新感線という劇団でずっと脚本を書いてきましたが、これで脚本家としてちょっと世界が広がった感じがして。一本立ちできるんじゃないかと思わせてくれた作品」と口火を切り、「なによりファンの広がり方、若い人たちへの響き方、世界のファンへの響き方みたいなことろで、アニメってこんなに可能性があるんだなと感じさせてくれた。いまの自分があるのも『グレンラガン』があるからだなと思います」と思い入れを明かした。
司会から「『キルラキル』や『プロメア』など数々のトリガー作品に、『グレンラガン』からの影響はありますか?」と今石監督&中島によるタッグ作品をあげながら質問されると、今石監督は「お客さんは『いつも一緒やんけ』と思っているんじゃないか」、中島も「『お前たちはこれだろう!』と思われているんじゃないか」、再び今石監督が「『また同じ引き出しを開けている』って」、中島が「しょうがないんだよ。この引き出しが好きなんだから!」と丁々発止のやり取りを繰り広げると、会場も大爆笑。中島が「『新しい肉まんです』と言っても、肉まんには変わりがない。でも『肉まんはおいしいよ』と思って作っています」続けると、今石監督も「何回食べても、肉まんっておいしいじゃんってね」と楽しそうに話していた。
息ぴったりにトークを展開した2人だが、本作は「原点になっている作品」と口をそろえつつ、中島は「今石さんと出会えたのも大きい。自分のホンをこんなに膨らませてくれる人がいるんだという喜びがあった」と信頼感を告白。すると今石監督も「中島さん前提で作るというのは、かなりの手応えだった。この出会いは大きい」とタッグへの充実感を吐露したこの日。「15年後の自分はどうなっていると思う?」という質問も投げかけられ、中島は「15年後に新作を発表できていたらうれしいですね」と話すと共に、「15年後も『グレンラガン』が劇場でかかっていたらうれしいね」とにっこり。「また同じ方が観に来てくださって、『ありがとうございます』と言えたらすてきなこと。息長く、観ていただければ」と心を込め、今石監督も「白髪になっても観ましょうね」と呼びかけて大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝