シリアスとエンタテインメントの高次元での融合!『BAD LANDS バッド・ランズ』のおもしろさを編集部員が分析
「ジョーはハッタリを効かすワルというより、愛嬌が前に出ちゃう」(下田)
佐藤「山田君もよかったね。クレイジーだけど甘え上手で、お姉さんへの愛情もあるし」
下田「ハッタリを効かすワルというより、愛嬌が前に出ちゃうような…。でも、お姉ちゃんに頼りっきりではなくて、自分なりに考えているところもあるんですよ。喫茶店での会話を聞いていると、ただ者ではない感じがします」
別所「ハマリ役ですよね。ジョーはバカっぽいんだけど、意外に頭が切れるというか」
佐藤「漢字は読めないけど、数字には強い。というのも、あの過酷な環境で生き延びていくためには必要だったんだよね」
下田「ジョーは刑務所にいる時に英語を勉強していたと言っていたけど、劇中で話す英語は二言くらい(笑)。そういう部分も含めて、憎めない愛すべきキャラクターですね」
「表情や動作で様々な修羅場を説明してしまうのは宇崎さんのすごいところ」(別所)
別所「私は、宇崎竜童さんが演じた曼荼羅(まんだら)が大好きなんです。元ヤクザでコワモテなのに、一人称が“僕”というのがツボでした。この感じ、わかりますか?(笑)」
下田「わかるわかる(笑)。カッコよかったですね。登場した瞬間から、師範感が漂っていましたから。実は後半になってから出てくるキャラクターなんですが、疑似家族のようにもなる重要人物!」
別所「優しい人なのですが、真剣な話をする時に目つきが一瞬鋭くなる。キャラクターの背景ははっきりとは語られていないけれど、表情や動作で過去に経験してきたであろう様々な修羅場を説明してしまうのは宇崎さんのすごいところだなあ、と」
佐藤「酒を呑んで周りに迷惑をかけているのに、呑まなければまともっていうのがいい。あの世界で生きたいとは思わないけれど、あの世界で生き抜いている漢気のカッコよさは、確かにありますね」
別所「絶対にただ者じゃないですよね!」
佐藤「あと、賭場を仕切っている金髪の女性!サリngROCKという方が演じているみたいなのですが、本作で初めて知りました」
別所「大阪の劇団でご活躍されている方みたいで、映画とかドラマなど映像作品への出演は今回が初めてみたいですね」
下田「『ヘルドックス』におけるMIYAVIさんみたいな、美しいビジュアルで観客を釘付けにする存在感で、私も『この人、誰!?』となりました。原田監督といえば『検査側の罪人』でも酒向さんを発掘していましたし、個性あふれる才能を見いだすのが上手いですよね」
別所「特殊詐欺は許されないことですが、劇中の街の雰囲気もあって、登場人物たちにリアリティを感じました」
佐藤「撮影自体は滋賀県の彦根にセットを組んで街並みを再現しているんだけど、大阪の西成が舞台というのがおもしろいよね」
下田「“罪を憎んで人を憎まず”というか、悪いことはしていても悪人ではない、お互いに手を取り合いながら生きている。それが成立しているのには場所の魅力もあると思います。一方で、刑事が何気なく串カツ食べているシーンのコミカルさとか、大阪は自然と緩急が出る場所だなと思いました」
別所「ネリや高城たちが大阪の街を移動しながら高齢女性を相手に詐欺を仕掛けるシーンは、それぞれの視点からほぼリアルタイムに作戦が進行していく様が描かれていて、ヒリヒリしました!刑事を含め、ネリたちを狙う敵との騙すか、騙されるかの攻防はたまらなかったです」
下田「騙し合いや駆け引きが見どころなのはもちろん、アクションも盛り込まれていて、そういった意味でエンタテインメント作品としてのバランスもとてもいいですよね」
佐藤「ハードボイルドな要素も満点で、男性ウケしそうな映画なのかな?と思うんだけど、“観たい”と言っている女性が周りに多いんですよ」
別所「山田さんのような、美しい男性がアクションを演じるというのは一つのセールスポイントですね。それに予告編を観ると、“カッコいい女性を見たい!”という衝動が沸き起こります。安藤さんが主演というのも大きいんじゃないでしょうか」
佐藤「脇を固めるキャラクターも濃い人ばかりだから、彼女の自然な強さが際立つよね」
下田「虐げられながらも、這いつくばって頑張るタフな女性の話ですからね。とはいえ、演出は軽妙なのでシリアスすぎない。人々を包む大阪の街の空気感はリアルだし、アメリカのダイナーを思わせるネリたちのたまり場や、元カレの職場など、リッチな画作りもある」
別所「関西弁の響きも絶妙です。大阪、ちょっと行きたくなりますね。居酒屋街のようなところ」
佐藤「あの世界に住みたいとは思わないけど、とりあえず串カツは食べたくなる!」