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シリアスとエンタテインメントの高次元での融合!『BAD LANDS バッド・ランズ』のおもしろさを編集部員が分析

インタビュー

シリアスとエンタテインメントの高次元での融合!『BAD LANDS バッド・ランズ』のおもしろさを編集部員が分析

「“何度か噛み締めたら、メチャ美味しかった!”みたいな楽しみ方ができる」(下田)

シリアスなテーマを扱いながら、スリリングなエンタテインメントとして作り上げられた『BAD LANDS バッド・ランズ』
シリアスなテーマを扱いながら、スリリングなエンタテインメントとして作り上げられた『BAD LANDS バッド・ランズ』[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

下田「ネリが帰宅して料理を作って食べるまで、やたら丁寧に撮られているシーンがあるんですが。画は生活感たっぷりなのに、バックで流れる音楽は重厚なクラシックなんですよね。“ここでそれ流すの!?”というような。原田監督の作品は、そういうミスマッチの気持ちよさがあります」

別所「映画冒頭にもクラシックが使われていて、“高尚な映画かな?”と思ったら、そうではなくて。料理のシーンも、同じテンションで淡々と進んでいくおもしろさがありますね」

下田「『BAD LANDS』のタイトルロゴが表示されるまでも長かったですよね。そこまでの劇伴や編集もツボでした(笑)」

佐藤「そのあたりは『ハスラー』を意識しているみたいですよ。時計の針とか、ネリたちが隠れ家にしている“BAD LANDS”の店主がミネソタ好き?みたいな要素など」

下田「引用元がわかると楽しいですね。前作の『ヘルドッグス』でも、口上を俳優に話させるようなシーンがありましたね。酒向芳さん演じる警視庁の人間が主人公に説明する体を取りながら、“この出し物はこういう仕組みです”と観客に説明する。あのまくし立てるようなセリフのすべてを咀嚼できなくても、観客はいまからなにを見せられるのかがよくわかる。だから、最初はカオスに身を委ねるだけでおもしろいんですよね。途中でガラッと作品のテイストが変わったりすることもあるし、原田監督の映画にはそういう疾走感があります」

別所「原田監督は一つ一つのシーンに意味を込めて作り込みますからね。賭場のシーンでも、山田涼介さん演じるジョーが意味深なセリフを言っていたり。ちなみに、賭場場になっていた建物って、『燃えよ剣』でも使われていたセットだったりするのでしょうか?」

原田監督と山田涼介タッグ作で使われたロケ地も登場?
原田監督と山田涼介タッグ作で使われたロケ地も登場?[c]2023『BAD LANDS』製作委員会

佐藤「すごい!よく気づいたね。実はパンフレットの編集をしていたので、そこからの引用なのですが、使われていたみたいです。『燃えよ剣』では池田屋事件のシーンだったのですが、山田君は沖田総司役だったので2階には上がれなかったそうなんです。でも、今回は2階に上がれたので、それが『うれしかった』と取材でも言っていました」

別所「少し掘り下げるだけでいろいろな小ネタが出てくるので、コアな映画ファンにも刺さりそうですね」

佐藤「とにかく、この映画は情報量が多いですよね。セリフ自体もですが、映像にも音楽にも小ネタがたくさんあるように思います。なので、最初はカオスのなかで振り回されるようなおもしろさがありますが、二度、三度と観返すことで新たな発見がありそうです」

下田「まずは一度観てみてもらって、気に入った方にはリピート鑑賞をお勧めしたいですね。“何度か噛み締めたら、メチャ美味しかった!”みたいな楽しみ方もできそうです」


BADLANDS_佐藤

BADLANDS_下田

BADLANDS_別所

取材・文/有馬楽


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